認識を改めましょう
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野口旭「グローバル経済を学ぶ」P035より
日本が貿易自由化や資本自由化などの対外開放政策を開始したのは、1960年代のことです。
中略
それに対して日本国内では、日本経済は欧米に比べて未だはるかに遅れた段階にあるので、対外自由化は時期尚早というのが一般的な認識でした。
つまり、急速な自由化を行えば、「強大な」欧米資本が日本経済をまたたくまに支配してしまうのではないかという懸念が極めて強かったのです。当然ながら、政財界を中心として、対外自由化への強い反対論が沸きあがりました。
今の状況と似ています。
貿易自由化が日本に東洋の奇跡と呼ばれる発展をもたらし、いわゆる誤解や批判の多い、グローバリゼーションのさきがけだったのです。
そして忘れてはいけないのが、その過程における構造調整ともいえる比較優位産業への移行の痛みです。
日本の高度経済成長にも、石炭産業、繊維産業、農業の衰退、縮小がありました。
TPPを押し売りにたとえて反対する人がいます。
ですが、これはズレています。
なぜなら、日本はすでにほとんど自由貿易だからです。
だから、すでにセールスでも押し売りでもなく、お互いが相互依存の状態になるのです。
つまり企業の営業同士のような関係であり、取引条件の多い企業に、もっと自由にしてこちらの商品も買ってくださいよ。とか、相手企業はだったら、そちらもこれまでうちへの販売(輸出)で利益を得てるんだから、残った取引条件(農業などの関税)をなくしてよ、そうすればお互い取引量が増えていいでしょう・・・という感じで。
そういう流れでこれまでも進んできたのに(WTO、EPA、FTAなど)、その取引条件に既得権益がある部門が会社内で妨害を繰り広げて、それを知らない(これまで無関心だったのに、扇動された)社員の一部が巻き込まれて、相手企業は外資が入っているから主権を奪われるとか、訴訟がたくさん起きる、会社の福利厚生がなくなるなどの大騒ぎ、というのが現状かと。
すでに相手企業に、もしくは自社企業に迎え入れていて、その中で取引を拒む部門との商談をしようということです。
だからメリットを示す必要もないでしょう。
ただ反対が社内(国内)に起きている以上、社員(反対派)には会社(政府)から説明が必要になるでしょう。
ですが説得は難しいです。
■開放は不人気政策
経済の開放は不人気政策と言わざるを得ない。
利益を得る多数の集団は口を閉ざし、被害を受ける少数集団の声ばかりが大きいためだ。
消費者は開放により安い輸入品を買うことができて、利益を得るが、その利益が大きくないために目立った反応を見せず、輸出企業は利益になると騒ぎ立てれば逆風にさらされかねないと懸念し、発言を控える。
結局、組織化された被害集団の声ばかりがクローズアップされるというアンバランスな状況に陥る。
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2011/11/24/2011112400779.html
朝鮮日報のこの記者が、国際経済学を勉強していることがわかる発言です。
伊藤元重氏「ゼミナール国際経済学入門」
P339
要するに、安価な製品が入ってくることの利益は経済全体に薄く広がり、被害の方は経済のごく一部に集中するグループ(日本製品と競合する製品を生産する企業や労働組合)が強靭な反対活動を行うのに対して、利益を受けるグループは一人ひとりの利益が薄いゆえに政治的に大きな力になりえない。
その結果、日本からの輸入に対して、保護主義的な力が強くなるのだ。
これはアメリカ側の視点ですが、日本でも現在、農業団体のTPP参加への反対活動が新聞でも取り上げられています。
上の引用と同じで、その国民の数%に満たないという運動でも、その他が無関心であるためにこういう問題が生じることになり、それが日本全体の総意のようになります。
このような思い込みをひっくり返すのはゼロから説得するより難しいでしょう。
>TPPで関税が引き下げられ個別物価が安くなる。
公務員人件費が削られ国債の発行額が下がる。
公共投資の完全入札で事業費が下がる。
これはすべてデフレ圧力にはならない。
むしろ国民の経済厚生が上がる良策である。
「TPP、公務員人件費削減、規制緩和はデフレを悪化させるから反対」という意見はよく聞きますが、おっしゃるようにデフレに対する誤解がもとになっていると思います。
またそのような人の多くが、既得権益を受けているわけでもなく、いたって真面目に日本経済の事を考えて反対しているところがやっかいです。
本人たちは良かれと思ってのことでしょうが、結果として既得権益者を擁護するだけになってしまっています。
仮に彼らの誤解を正す方法があったとしても、誤解を正すというのは情報がゼロの人に教えるよりも大変ですからね。ますますもってやっかいなことです。
のように。
比較優位というかそれ以前に、貿易は交換なのだから国外に限ったことではありません。(分業)
つまり国内でも比較優位に特化することは日常的に行われてきているのです。
貿易も国という単位が無ければ、国内での交換、分業と同様ということです。
安価で品質の良い(それだけではないですけれども)商品が生き残るのです。
この取引や投資の相手が外国というだけで、感情論になってしまうのが貿易の難しいところなのです。
他に、TPPを女性を襲う強姦魔に例える方もいます。
ですが、一方的に日本が受け入れ側、女性だと思い込んでいることに誤解があります。
貿易はすでに相互依存で輸入増(減)は輸出増(減)です。
話を簡単にするために2国間に限定して例えると、異なった2国間による国際結婚みたいなものです。
海外の妻(輸入側として)に日本の男性(輸出側として)すでに合意に基づく関係で、その関係を良く思っていない両国の周囲の人たちが、夫婦関係をより深めようといているのを妨害しているのです。
日本側の女性(輸入)と、海外の男性も同様で、海外の男は乱暴だとか、強欲だとか、お金を毟り取られ、家をのっとられるとか吹き込んでいるのが現状で。
ですが、実際に日本は国際結婚(輸出依存度)は少ないので、問題は少ないでしょう。
ただ、そのカップルに横恋慕している人には(影響を受ける産業)当然ながら耐えがたい苦痛を伴うのも否定できません。
また、男女関係(国際関係)なので、トラブルも当然あるかもしれません。
それでも、お互いにそれを乗り越え、高めあっていければいいのです。
http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2011/11/24/2011112400779.html
以下引用
1970年代末以降、韓国経済史はまさに開放の歴史だった。市場を開くたびに「開放すれば死んでしまう」との声が大きかったが、いざ市場を開いて外国との競争が始まると、学びながら実力を伸ばし、競争に勝つという韓国人の「闘魂」を発揮し、懸念は杞憂(きゆう)に終わった。果敢に門戸を開き、国と企業の競争力を引き上げてきた結果、韓国は世界9位(貿易規模基準)の貿易大国に成長することができた。
■デマや憶測を乗り越えた開放の成功史
70年代末、韓国政府は菓子市場の開放を推進した。当時、輸入菓子には40%を超える関税がかけられていたが、これを8%まで段階的に引き下げていく計画だった。よい菓子といえば南大門市場で売られている米国製・日本製の輸入菓子が思い浮かぶような時代だったため、菓子業界では「国内メーカーが全滅する」とのうわさが広まり、韓国製の菓子を守ろうという声が大きかった。
だが、開放への懸念はやはり杞憂に終わった。ロシアや中国、東南アジア諸国で幅広く人気を博している「チョコパイ」(74年発売)や「ホームランボール」(82年発売)の成功神話は、むしろこのときから始まった。80年には1500万ドル(現在のレートで約11億6000万円、以下同じ)だった菓子類の輸出額は、2009年には2億5000万ドル(約193億円)に拡大した。
キム・テグン記者
朝鮮日報/朝鮮日報日本語版