名目か実質か | ラヴログ

名目か実質か

今回は素直に疑問に感じたことへのエントリです。
以前、アメリカの物価が上昇しても貧困層の所得は増加していないので、実質半分の所得になったという指摘がありました。
ちなみに、GDPに比例して物価も上昇しているという指摘もありましたが、あのGDPのグラフをよく読めば、実質と書いてあるのがわかります。
つまり、物価調整済みの数値ですから、その上昇分以上にGDPが増加しているということなのです。(とすると、GDPに比例して物価も上昇しているという指摘はまったく意味をなさないことになります。というか、何を指摘したかったのか分からなくなるのです。)
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5分位数世帯所得の変化のグラフ

この指摘を受けたときに思ったのは、これは実質なのだろうか?名目なのだろうかということでした。
どう考えても、所得が半分になったら生活が出来ないだろうと思ったからです。

ですが、アメリカには所得保障もあるようなので、ソースらしきものも見つからなかったのでスルーしていました。

偶然、やはり実質ではないか、というソースになりそうなものを見つけたので紹介します。
道草ブログさま「クルーグマン「我ら99.9パーセント」(NYT,2011年11月24日)」より
http://econdays.net/?p=5385

ちなみにこのブログを読むと、GDPと所得格差が生じることとは別問題ということがよく分かります。(後述しますが、トリクルダウンや新自由主義、市場原理主義は経済学ではありません政治思想ですのでよろしくお願いします。)
それはおいておきまして・・・

政策論議に入る前に,ちょっとばかり数字をみておこう.

格差に関する議会予算局の最新レポート (pdf) は上位1パーセントの内訳まで覗いていないけど,以前のレポートはそこも見てる.ただ,2005年までしかデータがない.そっちのレポートによると,1979年から2005年までに,アメリカ人の所得分配で中央にいるインフレ調節済みの税引後所得(手取りの収入)は,21パーセント上昇している.同様の数字は上位0.1パーセントだと400パーセント上昇している.



ここの最新レポートというpdfファイル。
http://www.cbo.gov/ftpdocs/124xx/doc12485/10-25-HouseholdIncome.pdf
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1979~2007年の世帯収入の分配ということで、微妙に違うものですがこれを見てもだいたい同様の傾向ではあります。
違いといえば、高所得者層以外の所得で、先のグラフでは増加傾向だったものがこちらでは減少しています。

ここで、「でも物価が倍になっているんじゃ、更にもっと減っているのでは?」という指摘は間違いです。
なぜなら、インフレ調節済みの税引後所得だからです。
ということは累進課税も分配調整にほとんど寄与していないのですね、これは日本も韓国も、らしいです。これこそ、トリクルダウン理論、市場原理主義などの弊害です。(後にも書いていますが、ある程度はアメリカ国民の決めたことでもあります。正誤は難しい価値観によるものだということです。ダメ経済学とも違います。)

つまり物価調整の数値だということです。
このことから、おそらくこのグラフも、最初のグラフも実質所得であろうと推察できます。
ですから、給与は実質半分にまでは下がっていないであろうと考えます。

アメリカの格差は確かにすごそうですが、高所得者層への減税やこの分配率も、ある程度は国民が決めたことでもあるのですよね。いいとか悪いは抜きにですが。
アメリカのイデオロギーとして、頑張った人が報われる(かどうかは別として)市場原理主義的なものがあるためということもあるのでしょう。
ですが、景気が良く(GDPの増加)仕事があるうち、生活が成り立っているうちは、所得減少も我慢できても、さすがに景気が悪くて仕事が無くなる(GDP、経済成長の減速)状況に国民がノーを叫ん
いるのが現状なのでしょう。