低賃金国(中国)の輸出増加は、高賃金国の失業増加・賃金低下の原因に、十分なり得る? | ラヴログ

低賃金国(中国)の輸出増加は、高賃金国の失業増加・賃金低下の原因に、十分なり得る?

堂免氏による、「日本を貧困化させる経済学の大間違い」を先日引用して説明しました。
ところが、あらためてこの本を読み返すと違和感を感じる部分があるので説明したいと思います。





1、投資→貯蓄という堂免氏の主張はその通りというか、別に過去の経済学が間違えていたとも思わないのですが。
GDPを進行形で捉えると、そうなるでしょうけれども、結果としてみた場合は貯蓄→投資でも意味が通じると考えましたが、どうでしょう。

2、堂免氏は金融資産が無価値とも説いているのですが、団塊の世代の取り崩しによる問題を、お金は消えると主張していると勘違い?をしているようです。





3、低賃金国(中国)の資本流入と貿易黒字は両立可能であり、矛盾しない。






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財務省資料より筆者作成

日本の国際収支ですが、このグラフから分かるとおり収支はバランスしており、儲けでも損でもなんでもないのです。

堂免信義氏の「日本を貧困させる経済学の大間違い」P123

貯蓄-投資=輸出-輸入

低賃金国には外国資本の対内的投資があるために、国内の貯蓄以上に投資できるとされ、したがって左辺の値はマイナスになる。すると同時に右辺がプラスになることはあり得ない。低賃金国は、資本流入に見合った分、貿易赤字になる。生産性向上と共に賃金も上がるからだ。

堂免信義氏の「日本を貧困させる経済学の大間違い」中からクルーグマンの著書「良い経済学 悪い経済学」の?抜粋より。

堂免氏は3、を根拠に経済学の間違いを主張しています。

堂免氏はこの公式には異論を持っていないと主張。
この式が投資と貯蓄の順番が違うと主張します。

貯蓄=投資+輸出-輸入

を主張します。

ですが、これは公式としても成り立つので、別に経済学が間違えているという主張になり得ないのではないでしょうか?
経済学が間違っていないのでこの主張の論拠に上記はなり得ないと考えます。

これも堂免氏が、経済学は中国が資本流入なのに貯蓄超過だし、貿易赤字にならないのはおかしいという主張をしていると勝手に勘違いしてるのではと思われます。(国際収支を理解していない?)

資本収支黒字と貿易黒字の2つが同時に達成できているからというのが、論拠のようですが、これも上記グラフの
平成15年と16年を見てもらえば、日本の国際収支でも分かります。

資本収支と経常収支の2つが黒字になっています。




4、低賃金国(中国)の輸出増加は、高賃金国の失業増加・賃金低下の原因に、十分なり得る。

堂免氏は3、を根拠に4、を主張しています。
ですが、先程の説明したように、経済学が間違っていないので、この主張の論拠に上記はなり得ないと考えます。

まず貿易黒字は中国の儲けではありません。
そして、中国は貯蓄超過なので、その分が海外への投資となった結果です。

上のグラフを見れば分かりますが、経常収支と資本収支がプラスなら反対側はマイナスになるからです。
その原因は外貨準備増(国際収支ではマイナスに表記されます)によるものです。これが中国のインフレの原因でもあります。

外国からの資本の流入より、海外への投資のほうが上回るので貿易黒字になるのです。

中国総貯蓄率はGDPの50パーセント(日本で約30パーセント?)にもなります。これは各主体の合計。
なので、それが消費されずに海外への投資になり経常黒字になるのです。



中国の輸出増加

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ジェトロより筆者作成

確かに輸出が増加しています。

高賃金国は先進国ということでよろしいかと。
一番影響がありそうなのは、消費大国のアメリカ?

低賃金国からの輸入で、輸出産業はいったいどうなっているでしょう。

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ジェトロより筆者作成

確かに輸入が増加していますが、輸出も増加しています。

さてGDPは国民所得も意味します。
GDPが増加傾向ということは、賃金の低下とは言えないのでは?

先進国と思われる国の失業率です。

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ジェトロより筆者作成

中国の輸出増加との関連は見られないと思います。

どうやら堂免氏の4、の十分なり得るとは違うようです。
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