今回は「仰ぐ」 「扇ぐ」 「煽ぐ」 の使い分け方について。
と言っても取り分け難しい訳でもありませんよね。
「仰ぐ」の旁は「跪いて立つ人を見上げる様子」を示しています。
ですから「上を向く」以外にも「尊敬する」や「求める」といった意味も含まれます。
(例:天を仰ぐ。師と仰ぐ。指示を仰ぐ。)
「扇ぐ」は勿論「扇子や団扇などを動かして風を送る」行為です。これは説明するまでもありません。
さて肝心な「煽ぐ」、これは「扇ぐ」と全く同じ意味です。
火偏だから「風で火を盛んする」と思われがちですが、飽くまで「扇子や団扇などを動かして風を送る」行為を指すのです。
則ち「風で火を盛んにする」という意味の動詞は、「煽ぐ」ではなく「煽る」を用いることが最適なのです。
最も「煽ぐ」で通じないとは限りませんが、言葉は正しく使うべきです。
因みにこの「煽」の字ですが、所謂俗字と呼ばれる正しいとされない字なのです。
しかし実際、俗字が一般化されるのはそう少なくなありません。
(例:當→当,效→効)
さてこの「煽る」は先の意味より、「唆す」の意味でよく使いますよね。
「唆す」でしたら、「扇ぐ(煽ぐ)」+「立てる」の「扇ぎ(煽ぎ)立てる」という言葉で表現が可能です(他にも「煽(オダ)てる」という意味がある)。
これに関連して「酒(毒)などを一気に飲む」意の、「呷(アオ)る」という動詞があります。
実はこれ「煽る」と同じ語源なのです。昔は煽って、酒や毒を飲ませていたのでしょうか。
さらに何の偶然か、「仰ぐ」にも「毒を一気に飲む」という意味が存在するのです。
非常に興味深い話ですね。
以上「仰ぐ」「扇ぐ」「煽ぐ」の違いでした。