↑エンリケ・エル・メジーソ。ことYAMAHA GD-10(多分)メインギターよりも遥かに日常的に弾き倒してる楽器です。


トップのみ単板。サイドバック合板。


おそらくですが、トップはシダー。音がシダーっぽいですもん。




内部を覗くとバック板が削られていて軽量化されていて、更にブレーシングが謎の木材で追加されています。



もう取り外しましたが、魂柱も立てられていました。しかも4本も。



↑こんな感じにバイオリンの内部に立てられているのが魂柱(こんちゅう)です。



これを立てることによってトップ板の振動がバックに伝わって音量が倍増するわけですね。バイオリンでコレが良くてもギターでは少し勝手が違います。



バイオリンは弓で振動を与え続けられますが、ギターは爪でつま弾いて音を出す撥弦楽器(はつげんがっき)なので与えられるエネルギーに限りがあるのですね。だからギターにはバイオリンのように音量にターボ感がないのです。


その代わり伴奏もソロもいける便利な楽器にはなりました。




こんな柱が4本も立っていたら鳴りません。鳴るわけないです。


なので最初エンリケを弾いた時は驚きました。ネックはどストレートだし、薄い。弦高が低いのに弦の張りが強いんですよ。



しかもどんなに強く弾いても波打ち際に打ち上げられた流木にデコピンするようようにしか鳴らない…



なんだ?このギター?と思いましたね。とりあえず譲って貰って内部を見たらとんでもないことになっていたのでまずは魂柱をひとつひとつ外していきました。



魂柱を全部外したら、剛性が下がったからなのか弦の張りが弱くなりました。ギターって不思議!


↑バルベロ・イーホみたいなヘッド。突き板が4枚ですね。意外と手間がかかってます。


このギターを手に入れたのが今年の1月3日。魂柱外してもあんまり鳴らなかったですね。



高音はか鳴く細く鳴るけど、妙に鋭さがあったので気に入ってました。低音は量感がないというか、ギラッとしていません。締まりはあるのですが、低音のパワフルさに欠けるというか…低音が鳴らないと音量感が一気に下がります。



クラシックギターなのに、フラメンコギターのような音質なのは高音寄りの音量バランスだからでしょう。


音にも艶がないのでそれが渇きにつながっているのです。ムイフラメンカ!



↑ネック裏の親指が当たる場所には刃物か何かで削られた跡があります。この削り方がまた絶妙で、とても弾きやすい形状になっています。


このプレイアビリティがこのギターの最大の長所であります。


塗装の仕上げが超絶テキトーなのはご愛嬌です。




ギターに美観は大事ですが、この子にそういうのは求めてはいけないのです。理由は後述します…





↑脅威の弦高2.4ミリ。まだサドルに余裕があります。ていうかもう少しあげたいですね。



↑アルファベットのEみたいな傷跡。

オークションに出したら神経質な方は入札をご遠慮下さい。と書かないとまずいレベルを超えてます。


ジャンク品じゃん!と入札者に怒鳴られそうです。




これどうしたの?と元の持ち主に聞いたら「嫌なことがあってね…理由は聞かないで」とのことでした。ギターを投げたな…これは…




本当ゴミみたいなギターです。でも私は他のギター2本手放してこのギターを手に入れました。手放したのはお金が理由ではなく部屋が狭いので増やすなら減らす!が手に入れる条件(妻からの)だったからです。



前置きが長くなりましたが、実はこの練習用ギタ一1年近く弾いてきてかなり鳴ってきたのです。



部屋弾きなので、家族の精神衛生上鳴りの良さや音量は求めていないのですが…鳴ってきたのです…ハキハキと発声して元気のいい小学生みたいな鳴り方になってきました。



エンリケ君は6年間押し入れに幽閉されていたそうなので、私の手に渡ったことによって弾き込まれ変化したのもあるでしょう。



しかし、1番大きな要因は内部構造の変化です。



かつて魂柱が立てられていた場所に(表面板裏)パッチのような物がボンドで貼り付けられていたのですが、最近それがポロッと取れましてね…



それが取れた途端音が解放的になりました。パカッと封を開けたみたいな感覚でしたねー。




全く鳴らない楽器(魂柱時代)から、鳴らない楽器へ。鳴らない楽器からやや鳴らない楽器になったエンリケ君。




パッチが取れたことによってまぁまぁ鳴る楽器になりました。まぁまぁといっても、低音の量感は今ひとつではあります。




サドルを作り変えて、弦高を上げればビビらないし、音量も増すでしょう。ハイポジションの力強さも増すでしょう。でもこの子はこのままの状態で弾いていきます。



弾きやすくて音量が大きすぎないフラメンコギターの代替え品…というだけではなくお気に入りのギターなのですから。

↑よろしければ過去記事もあわせてどうぞ。