僕が21歳の頃、初めてのオフショアでの釣りに行った。
もう十数年前になる。
それが初めてのマグロとの出会い。
当時は、ルアーでマグロを釣るなんて誰も考えなかったため、ルアーはおろか使えるロッド・リールもなかった。
外国製のリールのPENNやフィンノールといったリールとロッドはかろうじて出始めてたGTロッド。
ルアーなんてK-TENに錘をつけたものを使ってた。
鮮明に覚えているのが、荒れ狂う海の中、職漁船にどなられ、それに対してロッドを片手に吼えてたこと。
あっちは命がけの職業。獲らねば食えぬ世界。
こっちは、衣食住全てを削って命をかけた趣味。
そんな殺伐とした漁場に、突如として現れるモンスター。
魚雷のごとく飛び出す巨大な魚に釘付けになった。
なによりも美しく、堂々とした容姿。
それだけで十分だった・・・というより、恐怖でいっぱいだった。
そんな記憶が、いまでは幻だったかの如く静かな海になった。
漁船の隙間を縫って、怒鳴られながら釣りをした記憶も、ドラム缶のようなマグロが飛び交ってた光景も
遥か昔だったかのように思える。
だが、たった十年程前の話で事実なのだ。
なぜ、このようなことを書いたかというと、マグロがある期間禁漁になるらしい。
僕は、一瞬寂しくなった。
でも、それでいいのだ。なのだ。
マグロという一つの生命を奪う趣味。
僕には、この命を奪う趣味について否定的な人を納得させる術はない。
おそらく、自分の中でも解決していないからだろう。答えが出るのかすら解らない。
それでも、大自然に抱かれながら海の王者と対峙したい。
僕が人生最後のときに、あの時抱いた畏怖の念、あれを再び味わえることを願いたい。