冬の森林生態学に関する国際実習を天塩研究林で開催しました。
手がかじかんで、外ではまともにペンで字も書けない真冬にわざわざ、実習をやるには理由があります。
北海道など寒冷地では、冬の寒さや積雪が年間を通じた生物の生活史や生態系のもつ働き (炭素固定機能など)へ大きな影響を及ぼしています。一方、そうした冬の気候が劇的に変化し、森林に住む生き物やそこで起こる物質循環へ影響を及ぼし始めています。しかし、夏に比べて雪の中では調査が困難であることなどの理由で、未だ冬の気候変動についての研究者も少ないのが現状です。
そのようなな中で、森林における冬の大事さ・面白さ、冬の気候変動の深刻さなどを学ぶ機会を持ちたいと思い、この実習を開催しました。初めての試みでしたが、アメリカ、ロシア、インドネシア、そして日本などからパッションのある学生の定員を超える応募があり、充実した実習となりました。ハイライト的に実習の様子を写真と共に振り返ります。
初日はガイダンスからのスキーfitting、そして積雪調査。まずは、基礎の基礎、雪のことを知らねば。
スノーサンプラーで積雪調査。夜の講義では、積雪がなぜ断熱材としての機能が高いかも勉強する。え、多孔質ってだけが理由じゃなかったんだ!?
そして夜は、招聘講師であるカナダのWilson先生 (University of Regina)から、寒冷地の根の生態学に関する講義。最新の研究成果が興味深く、つい、講師陣の方が議論が盛り上がってしまったのは秘密。。。
翌日からピリッと冷えた快晴の気持ちいい日が続く。
放射冷却で朝の気温はー20℃になることも。参加者たちは冬の厳しさを身を以て体感することとなる。
2日目、まずは、スキーをはいての天然林踏査。人生で初めてスキーを使うという学生も。推定樹齢400年ほどのミズナラの大木を眺めたりしながら、冬芽での主要樹種の同定方法を学んだり、凍裂、雪の下のササの様子、倒木更新、雪解け時期を早める実験の様子を見学する。冬芽のつき方で対生は英語でopposite, 互生はalternateと言うらしい。空には私たちを迎えるように、オジロワシが一羽、優雅に舞っていた。
続いては、雪上車で森林の伐採現場へ移動。アカエゾマツの木を伐採するところから採材までを見学する。巧みなチェーンソーワークを見たり、どのような部位が木材として効果なのか、なぜ冬に伐採を行なうのか、作業上の注意点などを学ぶ。
ガッツリと昼食を食べてエネルギーを補給した後はフラックスタワーへ。森林伐採が、森林の炭素循環へ及ぼす影響についての長期研究の現場を見学する。もちろん、30mのタワーの頂上へも!
庁舎に帰ってからは、冬の炭素循環に関する講義を聞く。最新の研究結果を織り交ぜながらの講義は、臨場感がたっぷり。謎の多い冬の土壌からの二酸化炭素放出。まだまだ研究の余地がありそうだ。
3日目は土壌について学ぶ日。まずは、お約束の雪掘りをし、冬の窒素の無機化速度の測定方法や、土壌動物の調査法を学ぶ。フトミミズ、ヒメミミズ、ヤスデ、ムカデなど大型土壌動物も多々見つかる。個人的には、フトミミズが予想外にたくさん見つかって興奮。
土壌抽出実験もやりました。
庁舎に帰った後は冬の土壌中の微生物や土壌動物の働きや窒素循環についての講義。次々にわかってきた冬の土壌微生物の重要な働き(とあまり大事ではなさそうなミミズの働き)。
色々学んで冬の気候変動が進んだらどうなるんだろう...と思い始めたところで、最後のプログラム。各自実習中に興味を持った生物や物質循環について、冬の気候変動が進んだ際に起こるであろう変化を予想し、その予想を検証する実験計画を立ててみるという課題に取り組む。みんな熱心に取り組んでくれ、最終日の発表には、聞き手を唸らせる発表が続いた。
ここまで改めて書いてみて、4日間の短い期間だったが、盛りだくさんの内容だったと思う。後はパウダースノースキー練習がこれに加わればパーフェクトなのだが...今回の反省をふまえて改良し、来年度以降も実習を開催して行きたい。
最後に、遠路、日本の端っこまで足を運んでくれた参加者の皆さん、そして毎日美味しいご飯を作って我々の体力を支え続けてくれた賄いの皆さんに感謝して、報告おしまい。また世界の何処かで会いましょう。
ナットービーンズも食べたよ。
小林