別れた。
ツグと。
いまオイラ、どの辺り歩いてる?
半分くらい意識を麻痺させ、
肩で息して、歩道を朦朧、
ぶっ倒れそう。
オイラを構成していた大部分が
濁流に揉まれて呑まれて、
津波の引き潮に
持ってかれてしまった。
生きていけねえ。
オイラどうすりゃあいいのさ、
今日の日付変更線、跨いで生きれんのかい?
自力で生きれたことなんか、
そんな体験無いじゃんか。
容易な解決なんか出来っこない、
自分ひとりの力だけでは一生かかっても治せ
なさそうな重過ぎトラウマ抱えたどうし、
肩を寄せ合って生きてきた。
たまたま社食で、出逢った。
何となく毎日一緒に、飯を食ってた。
それ以来の、
15年間。
傷口を舐め合ったことは一度も無い。
軽々しく解ったような相槌打つのもやったことない。
お互いに。
意地が強いから。
前の彼女とも15年間、
付き合った。
銀座の丸源第何とかビルのクラブでママだった。
ツグとは、
今では男に変わっちゃった、その前の彼女と別れる時に、
3人で、「引継ぎ式」をやった。
ジョナサンで。
まあ、割と湿度低め、味あっさりめ、で。
前の女は、ツグに、こう引き継いだ。
「こいつはねー、とても一筋縄じゃあいかない、面倒臭い奴なんだよー!、
ツグくん、その辺、未だ全然解かってないんじゃないのー???、
だいじょうぶー?」
人間、最期の最後の崖っぷちまで詰めたら(酷い人間だ、)
駄目じゃんか。
嫌だ嫌だ、って泣きついて来て、とか。
オイラは白痴か。
ホントに切りたい筈が無いじゃんか!
TVドラマみたく、
「ほら、貴方なに突っ立ってるの!!
そんなボケっとしる時間なんて無いんだよ!、
さあ、今直ぐ彼を速く追っかけて行きなさいよ!!、さあ!!!」
、っていう役のおばちゃんは、リアルではね、いないんだよ。核家族だし。
ツグは、
オイラがたぶん通算100回はやった芝居を、
全部、見抜いてたんだな。
一度たりとも「追っかけて」は来なかった。
お互い、喧嘩するときは血みどろ。
パトカーは3台も4台もどんどん来る、
消防もはしご車やらハイパーレスキュー隊やら、
とにかく地元管轄の署の緊急車輌が全部すっ飛んで来た時もあった。
オイラが、演技だ駆け引きだ、っての抜きで、
今度ばかりは本当に追っかけて
走って来てくれなきゃ困るギリギリラインでも、
ツグは、オイラを追っかけては来ようとはしなかった。
もう、いくら何でも今は、
お互いを引き留める、頑張る力を、
ツグもオイラも、いつの間にか、亡くして、
(失くして、)しまってるよね。
オイラから、大切なとか、他に代え難いとか、
そんな安易に当てはめられて表現出来得ることばが一切見つからない。
ツグ、
最後に、
オイラに、
胸に溜めていたほんとうの気持ちを、
正直に言ってくれたね。
「15年間ずっと、二人で一緒に居ても、
私はずーっと、余計に、
孤独を感じていたんだよ。
独りだったんだよ。」
15年間も、そんなに
オイラは酷かったのか。
大切な、家族以上なツグに、
刑務所の中みたいな非道い非道い我慢
させてしまった。
本当に、 ごめんなさい。
オイラなんか、死んでしまえばいい。
このまんま、どっかの殺風景な臨海工場地帯の
岸壁に、風船みたいに膨れて浮いて上がって、
たまたま釣り人に見つけてもらえば良い。