夫が「ラリーが店出したらしいよ」と
テキストを見ながら言った。

何の店?
ホットドック屋。

「クラッシックカーを持ってる人の溜まり場になってるらしい」
「何やってんだろうな」と笑ってテキストを見ている。

ラリーは夫がずいぶん前にお世話になったパイロット。
会社の経営者でもあり、一緒にも飛んだしハンティングにも行った。

「いこうよ」と私。「ホットドック食べに。」
「おごってやるってさ」



そしてお昼頃、向かったんだ。



そんなに遠くないと思ったのに
走っても走っても着かない。



ジョシュアツリーまで出てきた。

標高高いんじゃないの?寒そう。
私は思いっきり薄着だった。

そして、1時間以上走ったと思う。
ただ広い田舎にそれはポツンとあった。



週末のランチ時間で人が溢れるようにいた。
小さな町の週末の溜まり場みたいだった。



小さな店の中は白人ばかりでみんなホットドックを食べていた。

ラリー。私は手をふる。


夫と私、両方をハグしてよく来たと満面の笑顔。

ラリーは夫がお気に入りだ。

「いつ開けたんだ?昨日のテキストまで知らなかったよ」と夫。

私は久しぶりだった。3年ぶりくらいかな。
ラリーはシャイなドイツ系。私の知り合いのドイツ系はみんなシャイだ。

そこ今拭いてやるから座んなと私たちを席に座らせた。


昔のナンバープレートが並んでいる。「昔の」というところがミソ。


こういうクラッシックの看板が沢山はりつけてあった。

何食べたい?
もちろんホットドックだよ。おすすめは?
全部さ。売れ筋はこれとこれかな。
じゃあそれ。
イージーだな。飲み物は?
レギュラーコーク。

アメリカではレギュラーコークって言う。ダイエットもあるから。
普通のがいい。



ラリー。(夫撮影)



ラリー、このフライは
ラリーと食べたのが生まれて初めてだったんだ。覚えてるか? と、夫。

覚えてるさ。トリップ先でな。


ピクルスフライだった。

ピクルスの甘酸っぱさが油だらけのフライに合う。
ベットリランチドレッシングをつけて食べる。
コーラを飲む。

これこそジャンク。



ベーコンやトマトやオニオンにアボガドが乗っていた。
ビーフ100%のソーセージはその辺のアメリカのやつ。
今流行りのグルメソーセージを完全に無視した昔ながらの普通のやつ。



やっぱりチリだよね。
チリドッグは外せないよね。

シャイなドイツ系は
私たちが食べている時は席にやってこないんだ。

普通、同席して話し始める。アメリカ人って。
ラリーはちがう。すぐいなくなる。


そして急に現れて、ウインクしながらこれをボンとテーブルに置く。

なんでこれが食べたいってわかったの?
トライしてみろ。俺がつくったんだ。


ほんとかよ。


ラリーはシャイなくせに
よく冗談を言う。下ネタも大好きで。口もわるい。


俺の車3台あとで見せてやるからとまたどこかへ行ってしまった。



そして外へ出た。



クラッシックカーがすらりと並んでいた。
全部個人の持ち物で、ここで見せ合いをするわけらしい。

男のロマンってやつらしい。



ラリーがやってきて
夫と車談義が始まる。

これはラリーので
エンジンから塗装からピカピカにしていた。

塗装いくら?
直す箇所一つ一つが1万ドル以上の単位。
「クレイジーさ。」と頭に指を突きつけてバンとうつ仕草をする。



これも。会社で儲かったお金をかなり車につぎ込んできたな。
夫と飛んでる時は、クラッシックカーの話しなんて1度もしたことない。

早く完成させて今度来る時は俺の車で来るよ。と夫。
「いつだ?」
「2年後かな」
「なんで2年もかかるんだ。カモーン」
「自分でゆっくりなおしたいんだよっ」


1時間ほどいた。

店は奥さん、息子と娘、親戚一同がやっていて
家族総出だった。みんな楽しそう。レジにはバイトの可愛い女の子達が笑顔で接客。

家族でホットドック屋を経営。
ラリーの趣味であるクラッシックカーを展示して
町の友達が集まる店。

外には子供用に大きなバウンサーを置き
子供が沢山誕生会のノリで遊んでいた。

何もない小さな町に貢献している感じ。
ハロウィーンの夜は町でパレードをするらしいんだけど
終わった人達がホットドック屋に流れてきたそうで
「1000人は来たよ一度に」と言っていた。

帰りに店オリジナルの帽子やTシャツをくれた。
毎朝コーヒーを飲む度にラリー、ラリーって俺を思い出すぞと
ニヤニヤしながらマグカップもくれた。



ホットドックを食べにだけに、
往復2時間以上かけて行った。



「それがいいんだよ」と
夫は笑いながら私に言った。



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