今回は、ベルギービールが世界一美味しいといわれる理由について説明させていただきます。

その理由を10項目で考えてみました。


(1)ベルギー人の天才的なひらめきで造られた芸術品とその種類の多さ
 九州の70%の大きさの国土に140ぐらいの醸造所で1100銘柄以上のビールが造られていて、特筆すべきはそれぞれのビールが色合い・香り・味・アルコール度数・適温など実に個性的。
 
理由は次の2つ。
(a)ベルギー北部のフランダース(フランデレン)地方はオランダ語を話すゲルマン系、南部のワロン(ワロニー)地方はフランス語を話すラテン系。
 ベルギーは言語も民族も違う人が集まっているためにお互いの個性を大切にし、尊重しあう習慣が根付いています。
 ビールも同じでそれぞれのエリアに個性のあるビールが存在しています。
 

(b)イタリアやフランスのようにブドウが獲れる地方ではお酒といえばワインですが、ベルギーは良質なブドウがほとんど獲れなかったため、ビールを造り、健康の水として、また食前酒、食中酒、食後酒にいたるまでビールが飲まれてい

ました。


そのため、味わいやアルコール度数も様々な種類が造られました。あまりの種類の多さに分類が難しく、まだ確立した分類はないです。
アルコール度数は高く、アルコール度数5~6%は全体の39%、6.1%以上は50%も占めていいます。
ちなみにアルコール度数5%以下は11%です。
スーパードライ、キリンラガー、黒ラベルなどは有名ビールはすべて5%で、ベルギーでは低アルコールビールになります。
 
ベルギービールを世界で最初に分類した世界著名ビール評論家「マイケル・ジャクソン」は9種類に分類しました。
●マイケル・ジャクソンによる分類(Wiki抜粋)
①トラピストビール:修道院内部に醸造所を所有するトラピスト会修道院で作られているビール
②アビイビール:別名、「修道院ビール」で、かつての修道院のビールレシピを元に民間で委託醸造されているビール
③ホワイトビール:大麦に加え小麦または小麦麦芽を材料として作られたビール。
④レッドビール:熟成時にオーク樽で18~24ヶ月熟成させた伝統的なビール。
⑤ブラウンビール:茶色で香ばしさと複雑な味をもつビール。
⑥セゾンビール:ベルギー南部のワロン地方で主に作られ、春に製造、貯蔵し夏に出荷されるビール。
⑦ゴールデンエール:口当たりがまろやかだがビールの味がくっきりと強い、淡い金色のビール。
⑧ランビック:オーク樽で数年熟成させ、ベルギーにしかない伝統的な自然発酵のビール。
⑨フルーツビール:酸っぱいランビックやのど越しのよいホワイトビールに果汁を加えて醸造したビール。
 
●田村功著「ベルギービールという芸術」での分類 11カテゴリー28種類の分類
1.ランビック系 上記⑧に相当
 1-1 ストレートランビック 何もブレンドしない純粋なランビック
 1-2 ランビックドウス(ソフトランビック) ブランシュガーで甘みをつけ酸味を和らげた飲みやすくしたランビック
 1-3 グーズ・ランビック 2・3年寝かせたランビックと1年未満のランビックを3:7でブレンドさせたフルーティー・シャンパンのようなビール
 1-4 フルーツランビック 2・3年寝かせたランビックにフルーツを加え3ヶ月以上寝かせ、1年未満のランビックをブレンドさせたビール
2.ホーリィエール系
 2-1 トラビストビール 上記①に相当
 2-2 アビイビール 上記②に相当
3.ウィートエール系(小麦エール) 上記③に相当
 3-1 ペルジャン・ウィートエール
 3-2 特殊ウィートエール ※特殊な小麦や西洋ソバの実などで醸造
4.エイジドエール系(長期熟成エール)
 4-1 オールドレッド ブルゴーニュ・ワインに似たビール 上記④に相当
 4-2 オールドブラウン カラメルモルト・チョコレートモルトを使うため、茶色のビール 上記⑤に相当
5.ワロニアンエール系
 5-1 セゾンビール 上記⑥に相当
 5-2 ワロニアン・ブロンドエール 上記⑦に相当
 5-3 ワロニアン・ダークエール 琥珀色から茶色で焦げ臭と甘みが強い
6.ペルジャン・ペールエール系 ※イギリス・ペールエールのベルギー改良版
7.ペルジャン・ダークエール系
 7-1 ペルジャン・ブラウンエール ※イギリス・ブラウンエールのベルギー改良版
 7-2 ベルジャン・スタウト ※イギリス・スタウトのベルギー改良版
 7-3 ペルジャン・スコッチエール ※ベルギー輸出用スコッチエールの改良版
8.ストロングエール系
 8-1 フレミッシュ・ストロングエール ※北部のフランダース地方で作られるストロングエール、私の好み。
 8-2 ワロニアン・ストロングエール ※南部のワロン地方で作られるストロングエール
 8-3 ストロングゴールデンエール 上記⑦に相当
9.フレーバードエール系
 9-1 ハーブ・スパイスエール ※コリアンダー、シナモンなどでフレーバーを強くしたエール
 9-2 フルーツビール 上記⑨に相当
 9-3 ハニーエール ハチミツで風味付けしたビール
10.シーズナルエール系
 10-1 イースターエール ※復活祭の前後に飲まれるビール
 10-2 サマーエール ※夏に飲む、のど越しがよいビール
 10-3 オータムエール ※収穫祭前後に飲む、風味・度数を強めたビール
 10-4 クリスマスエール ※風味、度数が最も高くなり、最もメジャーなビール(ノエルともいいます)
11.ペルジャン・ピルスナー ※ベルギー版ラガービール
  
●藤原ヒロユキ著「ベルギービール入門」
1.ブロンドエール 上記⑦に相当
2.ブラウンエール 上記⑤に相当
3.ダブル 上記①②のアルコール度数が中程度(目安5~9%ぐらい)
4.トリプル 上記①②のアルコール度数が高い(目安9%以上) 
5.ホワイトエール 上記③に相当
6.レッドビール 上記④に相当
7.ライト・ペールエール 上記田村式の6に相当
8.ストロング・ペールエール
9.ストロング・ゴールデンエール 上記⑦に相当
10.ストロング・アンバーエール
11.ストロング・ダークエール 上記田村式7に相当
12.セゾン 上記⑥に相当
13.グーズ・ランビック 上記田村式1-3に相当
14.フルーツ・ランビック 上記田村式1-4に相当
15.ハニーエール 上記田村式9-3に相当
16.スコッチエール 上記田村式7-3に相当
17.スタウト 上記田村式7-2に相当
18.ボック ドイツ発祥のラガー。濃厚な高アルコール度数。
19.ピルスナー チェコ発祥の淡色ラガー。 上記田村式11に相当
 
(2)味が深いエールビールの大御所
ベルギービールはこれだけ多くの分類があり、とても味・色・香りが複雑で地方による特色もつよいことがわかっていただけると思います。
世界では約80のカテゴリーがある中、日本メジャービール(スーパードライ・黒ラベル・キリンラガー)は残念ながら1つのカテゴリー(ジャーマン・ピルスナー系)にしかないです。
他の種類が気になってきた方もおられるかと思います。

分類でよく見られる「エール(上面発酵)」の銘柄数がとラガービール(下面発酵)の銘柄数を圧倒的に上回る国はベルギーとイギリスのみです。
ベルギーの銘柄数の割合 ①エール:85% ②ランビック:9% ③ラガー6%
 
ビール超大国「ドイツ」は1516年4月23日施行「ビール純粋令」によりベルギーのような自然酵母(野生酵母)を使ったり、古典的なスパイスやフルーツを加えたりすることができなくなり、ビール製造の幅がせばまりました。
スパイスやフルーツを加えたビールが時間が経過するとどれほど香りや味が変わってくるかを楽しみになってしまうと、ドイツビール、イギリスビールでさえ、物足りなくなります。
さらに自然酵母で造ったランビックビールは酸っぱくて万人受けはしないのですが、もしこれが大好きになるともうベルギービールしかありません。
 
(3)ベルギービールならではのビールがある

それは①ランビックビール ②セゾンビール ③トラピストビールです。
①ランビックは紀元前からあるビールで、今ではベルギーでしか造られていません。
 ランビックはベルギーの伝統芸で、ビールとも思えない酸味や芳醇な深い味わいが特徴です。
 2・3年寝かせたランビックと1年未満のランビックをブレンドさせ、程よい酸味にしていく「グーズ」という種類が代表的です。
 さらに飲みやすくするため、何ヶ月も漬け込んださくらんぼや木苺を加えたりとベルギー人の「美味しいビールを造ろう」という気質が感じられます。
 
②セゾンビールは16世紀頃が起源とされ、ベルギーにしかないビールです。
 かつて農家が夏の農作業中に喉の渇きを癒すために、農閑期である冬の間に醸造した季節ビール。
 しっかりとした苦味とドライな酸味が大きな特長で、暑い夏に飲みたくなる爽快なタイプのものが主流です。ゴクゴクと喉を鳴らして飲むのにぴったりで、リフレッシュしたいときにも最適です。

 

③トラピストビールは、6世紀が起源とされ、トラピスト会修道院で作られるエール(上面発酵ビール)で、瓶詰後にも再発酵(二次発酵)が行われ、全体としてはアルコール度数が比較的高い傾向があり、長期保存が行えます

。このような「ボトル内再発酵」を「ボトルコンディション」と言われています。
 2008年2月現在は7箇所のみがトラピストの称号を名乗ることが許されており、そのうちの6種類はベルギー国内で醸造されるビールです。
 ということで、トラピストビールといえばベルギーということになります。
  ウェストフレテレン(Westvleteren)※世界一美味しいビールといわれ、日本ではハンドキャリーでしか味わえないビール
  オルヴァル(Orval)
  シメイ(Chimay)最古のトラピストビールといわれ、11世紀ごろが起源。
  ロシュフォール(Rochefort)
  ウェストマール(Westmalle)
  アヘル(Achel)
  ※残りはラ・トラッペ はオランダ。
 
(4)銘柄ごとにオリジナル専用グラスがある
 専用グラスのある理由は以下の3つ。
  ①泡立ちをコントロールする
  ②香り立ちを強化する
  ③ビールと泡がバランスよく口の中に入るようにする
 ビア・カフェではビールごとにちゃんと専用グラスを用意され、目の前で瓶からグラスに注いでくれます。
  
(5)ベルギービールは芸術品  

注文時は必ず銘柄をいいます。
日本では「生」と「とりあえずビール」で通用しますが、ベルギーのビアカフェでは少なくても30種類くらいはあるため、銘柄で注文します。
 
(6)ワインのように香りをきくビール
 日本のビールは一般的にキンキンに冷やしますが、ベルギービールはいくぶん温かめ(10~20℃でビールによって適温があります)にすることで、味と香りを楽しみます。
 またアルコール度数も高いため、ワインのように香りを楽しみながら、ゆっくり飲みます。ゆっくり飲むと徐々に温度があがり、香り、味が変わってきて、楽しみも人一倍です。
   
(7)ワインのように寝かせて(長期保存して)飲む
 日本のビールは新鮮さを売りにするラガービールが多いのですが、ベルギービールは一般的に生より、瓶ビールの方がおいしいです。
 というのも、ベルギーは瓶で二次発酵(または三次発酵)を行うため、飲むタイミング、寝かせる期間によって大きく風味がかわっていますので楽しみも広がります。
 ベルギービールはワインと同様に時間をおく(熟成させる)ことでよりおいしくなるビールが多く存在し、賞味期限が5年、10年、20年というものもあります。

 

(8)ワインのようにヴィンテージ(ビンテージ)がある
 ワインでは「90年のブルゴーニュは素晴らしい」とか、「89年のボルドーは特にいい」とかワインは年によって出来不出来がありますが、ベルギービールでもヴィンテージものがあります。
 さらにベルギービールはベルギー人の遊び心で毎年、ブレンドを変えたりして、遊び心やチャレンジ精神が見え隠れします。
 好きなヴィンテージ(ビンテージ)ものは毎年、飲んでみるという長年に渡って楽しめるのが、ベルギービール。 

 

(9)シャンパンのようなビールがある
 シャンパンのような代表的なベルギービールは「デウス」。まずベルギーで醗酵・熟成させて、フランス・シャンパーニュ地方に運び、シャンパンと同様に瓶詰めをするビールです。
 このデウスは、非常に手間をかけた独特の工程があります。
 ①動瓶(ルミアージュ)といった、瓶を斜め下向きに傾けて並べ、毎日、少しずつ回転させ、徐々にボトルをてていき、沈殿物を瓶口に集めます。
 ②ボトルの瓶口を-27℃の溶液に浸し、瓶口に集められた澱が凍って塊になります。この状態で栓を開けると内部の気圧により、この氷塊が弾き出されます。これを「デゴルジュマン」といいます。
 ③デゴルジュマンの工程でごく少量の酸素が瓶内に入り、このとき添加されるドザージュ(「加糖」または「補酒」)のためのリキュールと共に、シャンパーニュ特有のアロマがさらに成熟していきます。
 ④澱抜きで減った分にリキュールを加えます。
 ⑤最後にコルク栓をする
 以上がデウスをつくる工程ですが、ビールでこんなに手間をかけています。驚きませんか?
 このデウスはビールでありながらアルコール度数は11.5%で、フルーティな香りとスパイシー、本当に美味しい!
 こんな美味しいシャンパンなら数万円すると思いますが、デウスは3000円台で買えます。お得と思われませんか?

 

(10)ベルギービールはスローフード
 日本をはじめとして、世界では、大量生産で消費者大量消費してくれるラガービール(ピルスナー)が超メジャーです。企業がたいへん儲かるビールです。
 私たち消費者が企業の儲かるレールに乗っけられているのは複雑な思いがあります。
 チェコが1842年にピルスナービールを発明してから、ビール大国ドイツをはじめとして世界はその潮流にのり、大量生産・品質管理に優れたラガービール中心になりました。
 しかし、ベルギー醸造所は土地土地に伝わる伝統のレシピを受け継いだ製法でいまだにビール(トラピストビール、アビイビール)を造っています。
 世界の多くのビールメーカーは一ヶ月もかけないで出荷していますが、ベルギービールは昔どおり3~4ヶ月、ものによっては3年以上ゆっくり醸造させ、さらにそれを1年醸造・2年醸造とブレンドさせたりと研究意欲と手間と熱

意をかけ、ビールを芸術の域までもってきています。
 また、土地独自の野生酵母(自然酵母)を使い、伝統レシピに従い、ランビックビールを造っています。
 これらスローフードのお手本となるビールではないでしょうか?

 

今回、「なぜベルギービールがなぜ世界一おいしいか?」について説明させていただきましたが、皆さん、いかがでしたでしょうか?

 

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