ロック色際だつ 矢野顕子新作 | 青森名物男性下着

ロック色際だつ 矢野顕子新作

聴いたことない「自分」


 シンガー・ソングライターの矢野顕子が、新作「akiko」(ヤマハ)を22日に出す。グラミー賞を受賞したT・ボーン・バーネットをプロデューサーに迎え、ロサンゼルスなどで制作された意欲作だ。


 天衣無縫という言葉がよく似合う、温かみのある歌声。唯一無二のタッチのピアノ演奏。そして「ラーメンたべたい」「ごはんができたよ」などの優しく、柔らかい雰囲気に包まれた名作群――。1976年にデビュー・アルバムを出して以来、その独特のスタイルが多くの人から支持されてきた。


 しかし、今回は制作の最終的な判断をバーネットに委ねた。「自分でプロデュースするものは、たかがしれている。自分も聴いたことのない矢野顕子を聴いてみたかった」


 バーネットは、B・B・キングやエルヴィス・コステロらの作品を手がけているほか、「オー・ブラザー!」などの映画音楽でも知られる。矢野の現在の活動拠点であるニューヨークで、数年前に彼のコンサートが行われた。そのサウンドを体感し、「これだ。彼なら私を変えてくれるに違いない」と思ったという。


 実はバーネットは、30年以上前から彼女の作品を聴いており、プロデュース依頼にも快く応じた。その音作りについて、矢野は「非常に温かい低音があって、はっきりしたギターのラインがあり、描きやすいんだけれど難しい。音楽に対する理解がなければ作れない」と語る。


 制作にあたっては、彼が手掛けている作品を聴くように勧められた。デルタ・ブルースやカントリーも聴いた。「こうしなさい、というのではなく、曲の持つ力を私に教えたかったのだと思う」。その結果、事前に用意していた曲は、すべて破棄したという。それらは「要するに今までの矢野顕子だった」からだ。


 新たに作られた楽曲は「みなさんのためじゃなくて、自分のために作った」。笑いながら「みんなが聴きたいような矢野顕子はもういいかな。たくさんいい曲あるじゃない。それはいつでもやるからさ」と続けた。


 録音には、前衛的作品から著名なアーティストとの共演まで、幅広く活動するギタリストのマーク・リーボウも参加した。サウンド面では、彼のギターと矢野のピアノを中心に、ロック的な力のうねりのようなものを感じさせる曲が際だっている。


 レッド・ツェッペリンやドアーズなど英米のロックを代表する名作のカバーも収録。これまでの矢野の代表作とは異なった魅力を持っている。デビューから30年を超えるベテランの、新たな出発と言える一枚だ。


出典:読売新聞