何もやる事がなくなった私。鏡に写る白いクロスに包まれた自分をなんとなく見てる事しかなかった。


友子「あはは、なんか私達2人並んでしててるてる坊主みたいだね〜」

美帆「そうだね」

友子「違うのはこの透けてみえる服とタオルくらいかな?」

美帆「うん」


友子はこういう所で何となくよく気づく。
私は薄い服でそこまでだったけど、友子のピンクの服は本当に透けていた。
ベージュのタオルと薄い水色の服、ではあまり目立ったこともなく...


その流れで右側を向いてみると友子の奥には6番の子がまだいてカットされてなかった。
その子は薄ピンク色のクロスをつけられている。同じ袖がでない、ってのも見えた。

その奥は確か...OLさんだ!と思いつく美帆。
遠目で見るとカットは始まっていた。


その奥は通路になってるみたいで、4番より先の人はワゴンと美容師さんが邪魔になって見えない。
でもブルーのクロスをつけられてるのは何となく分かった。


こんな感じで必然的に何もやる事がないと今度気になるのは左側の待合椅子。
もう19時とはいえ、結構な人が待っている。
このバッチリ目の前の特等席は何かちょっと恥ずかしいかもしれない。

そんなこんなで見てるうちに6番の子の場所に若い男の美容師さんが来てカットが始まっいた。
ボブカットのその子は髪をブロッキングされてサクサク切られてゆく。この子もまた長さ調節だった。


6番の子のカットをチラチラ見ながら大人しく美容師さんを待ってると、右にまた振り向いた時に友子ちゃんがクロスの脇から手を出してこっちに手を振っていた。

美帆はえ?って顔をすると友子ちゃんが、

友子「ほら、そっち」
と指をさす。

指をさされた方向、つまり待合椅子の方を見るとちょうど入店した感じのクラスの同級生の空ちゃんがいた。

空ちゃんがこっちにも気づいて手を振ってくれたので、私もニコッとして返す。
空ちゃんはそのまま目の前の見える位置の待合椅子に座った。


そんなこんなしてると、
「お待たせしました」という声がかかり、鏡を見ると隣の友子ちゃんの方に美容師さんが来てた。
こちらも30代くらいの男性美容師。

「今日はどうされますか?」という声に、

友子「この髪をヘアドネーションしてほしいのと、まだ暑いので大体こんな感じにしてほしいです」
そういって写真を2,3枚渡す。

美容師「分かりました。ちょっと大胆なイメチェンになりますけど大丈夫ですか?」

友子「はい!」

美容師「分かりました」


と言ってさっき手を出した場所で崩れたクロスを元に直すと、髪を全部下ろして少しずつ束ねるヘアドネーションの準備の作業に入った。
隣で聞いてた美帆は大胆なイメチェンなんて言葉を聞いて中々思い切りいいんだなぁ〜なんて思う。
まぁそれもそのはず...という訳。学年で少し話題になっている故、ただの普通の髪型、というのは雰囲気的にはできなくなっていた所もある。


美帆も写真を持っていたのだが、2パターンあった。
友子ちゃんが話題になってても普通のボブカットにするなら私も普通にいこうと思ってた、もう一つは校則に触れないけどちょっと意表ついた感じの。



隣でヘアドネーションの準備をしてると、私の所にも美容師さんが来た。
40~50代くらいのいかにもおばさん、って人。美帆にとっては印象悪い。


美容師「お待たせしました。どうされますか?」

いかにもぶっきらぼうに聞いてきたので尚も印象悪い。


美帆「今日はヘアドネーションして、あとこんな感じの髪型にしてほしいんですけど」


美帆は隣の大胆なイメチェンという言葉を聞いて私も普通にする訳にいかないか。と考えてクロスの中から手を出して意表つく方の写真を美容師さんに渡した。


美容師「はい、分かりました」

それだけ言って、私にはワゴンのフックにかけてあったピンク色のネックシャッターを取り付ける。
そして1束に結んでいた髪を下ろした。ゴムは手前の雑誌の上に置かれる。

白いクロスの上に今まで伸ばしてきた髪が一気に広がる。


それを美容師さんは少し多めにゴムで束ねながら準備していった。


鏡越しに隣を見ると、友子はもうヘアドネーションを終えてて霧吹きで濡らされてる段階にあった。


その時、

美容師「はい、じゃあ今から切りますね」

美帆「は、はい」

声をかけられて慌てて顔を正面に戻した。
束ねられた髪を1束ずつ切っていく。ただ丁寧にとはいえないスピードで。

そしてあっという間に全ての束を切り終えて、その髪の束をワゴンの下段に入れると私にも霧吹きでプシュプシュ水を全体に吹きかけられる。
この動作も少し荒くてちょっと目をつぶっていた。

水を全体にまんべんなくかけられてブロッキング。下段から刈り上げにならない程度のカットが始まった。
それまでにない感じで指で挟まれて長さのカットが進んでいく。

ブロッキングも1段降ろされてまたサクリと切られるの繰り返し。
美帆からしたらとてつもないスピードでカットが進んでいった。

そしてブロッキングを解かれて一番上に被さる髪のカット。
ここまで殆ど経ってない。

さっきの荒れた手つき、というのもそうだけど、何となく慣れた手つきにも感じた。


程なくして今度は右サイドのブロッキングをして長さのカット。
切られた長さはクロスに落ちる毛くずを見てれば分かるのだけど、さっきよりはちょっと長めの毛くずが落ちてくる。

美帆は右サイドが切られただけでも鏡で大体できあがってきたかな〜なんて感じもしていた。
やっぱりロング→この長さは切るだけでも実感が湧いて写真に近づいてる気もしてる。


ブロッキングを降ろされて再び同じくらいの長さで切り揃えていく。
後ろは少し耳ラインに沿って隠れる程度、前側は耳の半分くらいの長さになっていく。

とりあえずの長さを切り終えた所で今度は左サイドのカット。
またブロッキングされてサクサクと切られていく。


さっきまで美容師が右にいて見えなかったのがクリアになったので、ちょっとまた鏡越しに観察。
って時に6番の子?だったと思う私服の中学生くらいの子が後ろを通っていった。
待合椅子の前、左横を通っていって会計じゃなかったので、シャンプーかな〜なんて思う。

そして友子はというと、全体的な長さは切り終えたのか、どうやら梳きカットに入っている様子だった。
「大胆なイメチェン!」とか言ってた気がしたけど、それは普通のボブカットにしか見えなかった。
私の方はというとどんどん短くなる。これは思い切って挑戦して失敗した方だと美帆はちょっと暗くなってしまった。


そんな中でいつの間にか左サイドのブロッキングも降ろされて、左右対称になる様な長さにまでなってきた。

じっと鏡を見ていると、

美容師「前髪も写真の通りでいいですか?」
とまたもぶっきらぼうな感じで聞いてきたので、

美帆は「はい」と答えた。


美容師さんは私の前側に回り込んで、さっきの長さカットと同じ要領で、指で挟んでサクリと切る感じで揃える。

その毛くずが丁度、小さい丸の中におしゃれサロン♪と描かれたロゴマークの上に落ちて隠れていく。


前髪は適当にとりあえずの長さで切り揃えられて、美容師さんはまた後ろに戻った。




今度は上段をちょっと分けてブロッキングされる。
美容師さんはハサミを持ち替えて、今度はすっすっと梳く感じに後頭部の中程を切り始めた。

下から上に少しずつ移動してくる。
さっきまでのちょっと長さがあって細かい毛くずの上に、今度はまとまった感じのふさふさっぽい毛くずが重なる。
鏡の中で見ると、白いクロスの上にちょっとずつ毛くずが目立つ感じになってきた。


上の方まで梳きカットが終わるとブロッキングを解かれて、今度は右サイドのブロッキングに移った。
さっきと同じ要領、ただ今度は耳の上の方の所からだった。





そんな途中で、
「お疲れ様でした。壁奥のシャンプー台へどうぞ」

と隣で声がする。
白いカットクロスを巻いたまま、すっかり厚みのあるボブに生まれ変わった友子が鏡に写った。
片手でクロスの横から手を出してこっちに向かって手を振りながら。

私の左隣を通っていったのだけど、その後ろ姿がまるで本物のてるてる坊主そっくりだった。






ちょっとの量梳かれただけで今度は左サイド。同じくブロッキングされて耳の上辺りですっすっと切っていく。

同じようにこちらも少量で早く終わる。


そして美容師さんはこう聞いてきた。、

美容師「最後にここの部分刈り上げますけど、どの程度にされますか?」

美帆「私はどうしたら分からないので、写真の通りにお任せでお願いします」

美容師「分かりました」


と言って、美容師さんは右・左サイドの髪をまたブロッキングすると壁の奥側へ消えていった。
そして再び戻ってくると、

美容師「それではバリカン入れますね」

と言い残してバリカンのスイッチを入れる。
かなり図太くブーンと響く音が美容室の中で鳴り、右の揉み上げの部分から刈り込みが始まった。

そのまま耳の上、おでこの生え際のラインまで刈り上げられる。
再び、今度は揉み上げの耳に近い場所から刈り込みが始まって、またおでこの生え際のラインで止まった。

美容師は数回刈り込んだ所を刈り残しが無いように同じ様に繰り返し刈り上げている。


バリカンを入れられた事なんてもちろん初めてだったので、美帆は少し固まってしまった。
そして左の待合椅子の方から何となく視線も感じてた。


ブーンという音は止まないまま、今度は左サイドに移る。
揉み上げから一気におでこの生え際のラインの高さまで刈り込まれる。
バリカンで刈り込まれた毛の塊がクロスの前をスルスルっと落ちていった。

再び耳に近い揉み上げの場所からバリカンが入る。
同じおでこの生え際のラインまで刈り込まれ、その後はこちらも刈り残しが無いようにバリカンを何回も入れ直していた。


ようやく終わるとバリカンのスイッチがオフになり、図太いブーンという音が止まった。
バリカンはそのまま目の前の雑誌の上に置かれ、美容師はハサミに持ち変えるとその流れで前髪をさっきの要領で梳き始めた。

ちょっと前髪は厚めだった事もあって、自然にストンと流れるような軽さになるまで少し長く梳かれた。


そして櫛で全体を整えられて、美容師さんはワゴンの下段に置いてある手鏡を取り出して、

美容師「はい、こんな感じで長さどうですか?」

写真の通りのマッシュショートに近い感じになってたので、雑だった感じの割には満足点で、

美帆「大丈夫です」


と答えた。
美容師さんはそれを聞くとピンク色のネックシャッターを外されて、

「壁裏のシャンプー台へどうぞ」と声をかけられる。
美容師さんが左に立っていたので美帆は右から抜けた。

そして椅子の周りを回り、待合椅子の前を通ってシャンプー台へと向かう。
待合椅子にはまだ空ちゃんがいて、こっちを見てたのか手を振ってくれた。





ワゴンと道具やら薬品等、置いてある場所を抜けてシャンプー台の前へ辿り着くと、そこには小さな丸椅子があった。

「シャンプーお待ちの方は呼ばれるまでここにお座り下さい」
と書いてある。
丸椅子には友子は居なかったものの、ミディアム位の女性が既に座ってたので横に座らせてもらった。
その人も白いクロスをつけていたが、スマホを弄ってて袖がある物だった。
よく見たら感じは大学生っぽい20代くらいの人。

そして2台あるシャンプー台を見ると、奥に友子らしき服装の人が寝ていた。
私が8番の椅子に座った後に後ろを通った記憶があるから、この女性は先にカットが終わった人かなと思ってた。


やがてアシスタントさんが来て、
「お待たせしました。こちらのシャンプー台へどうぞ」
と言われて、その女性はシャンプー台に横になった。


そして少し経つと、友子のシャンプー椅子が起き上がって、ターバンをした友子が立ち上がった。
シャンプークロスと同時に白いカットクロスも外されて、肩にタオルをかけられる。
元の私服状態の友子に戻った。


アシスタント「それではお疲れ様でした。それでは6番のお席へお戻り下さい」


と言われると、友子は歩き始めて小さく私に手を振っていく。

そしてそのアシスタントさんに、
「次の方、こちらのシャンプー台にどうぞ」


と言われて、私はシャンプー椅子に座った。

黒いシャンプークロスを取り付けられると、椅子が倒されて仰向けに寝そべる形になった。
顔に紙みたいなのも乗せられる。

首もちょうどゴムの所に当たって準備完了。
アシスタントさんは流し洗いを始めた。

一通り水が行き渡ると、シャンプーをつけられて頭皮をゴシゴシされ始めた。
こちらも割と早く、効率重視みたいな感じでちょっと荒い感じはした。


短くなった髪のシャンプーの感覚もまた違うもので、割と頭皮に首の腹がよく擦りつくような感じで洗われた。
特にバリカンで刈り上げられた部分はゴシゴシみたいな感じで初の感覚。

一度軽く流されて、軽くトリートメントをつけられて、最後にまた流される。
指ですかすような感じでさかさかっとされた。

水が止まると軽くタオルドライされる。
これもまた髪が短いと水気が飛ぶのも早くて、おでこの生え際の部分等とかはしっかり拭いてくれた。


そして頭にタオルを巻かれてシャンプー終了。
椅子が起き上がる。
シャンプークロスと同時に白いカットクロスも外されて新しいタオルを肩にかけられた。


アシスタント「それでは7番のお席へどうぞ。お座りになってお待ち下さい」

美帆「はい」

よく見ると上には店内の1~4と5~8の席の様子が映ったテレビがあった。


私は再び奥へと向かって、待合椅子の前を通って再び7番の席へと向かう。


途中でまたワゴンと道具やら薬品等、置いてある場所を通ったんだけど、そこではアシスタントさんがワゴンにまた新しい準備をしていた。


手前の3台あるワゴンの上には一番上には大きめのブラシと櫛が何本か入ったカゴ、霧吹き。
各色のカットクロスとタオル。
フックにはネックシャッターと手鏡がかかっていた。

奥にいくにつれ2台のワゴンには、大きめのブラシと櫛が何本か入ったカゴ、霧吹きが置いてあった場所にドライヤー。
そしてカットクロス。タオルは無かった。
フックにはネックシャッターと手鏡もかかってた。

その他にはパーマやカラー用の道具が入ってるワゴンもあった。


タオルはピンク、イエロー、ブルー、ベージュ、茶色、黒ととてもカラフルな感じで沢山棚に積まれていた。

クロスは手前のワゴンから、白・白・ブルー・イエロー・白と、ちょっと白が多めな感じ。
私が最初8番の椅子に座った時も1~6番に人が殆ど居たのだけれど、6番のピンク・4番のブルー以外は殆ど白だった気がする。


そんな沢山のワゴンがある所を抜けて、私は待合椅子、7番の椅子の方へ向かった。