「ふあ……あぁ……と……随分遅くまで寝てたな……」
ここは郊外の整備工場。もっとも、整備工場としてではなく、腕利きオヤジの魔改造工房としての名の方が知られているが。
自営業の上に、普段は辺鄙なジャンクヤードなので、ちょっと昼過ぎまで寝ていた所でさほど問題ではないのだ。
オヤジが身を起こし、タバコに火を点けたところで、やけに慌ただしい来訪者がやってきた。
「ねぇ、ここにどんな車も馬鹿っ速にしてくれるオヤジがいるって聞いたんだけど!?」
「あぁ、それは俺だが、まずは少し落ち着け……」
来訪者は、かなりの薄着が目のやり場に困る少女だった。
「とりあえずアンタの車を見せてくれ。」
「わかった!こっちだよ。」
店先にあったのは、バンパーやウェザーストリップも取れかかったようなシボレー・S-10。
「見た所、あんたは随分とスピードに飢えているみたいだが、なんだってこんな車を?」
「……安かったんだもん。本当はカマロとかマスタングみたいな、カッコいいV8のマッスルカーが欲しかったんだけど……」
「よし分かった。流石にこのスタイリングは大きくは変えられないが、中身はソイツらに一泡吹かせられるくらいにはしてやる……」
「本当に!?ありがとー!」
……そして作業場……
「全く、いじる度に切なくなってくるエンジンだよコイツは……まぁお別れではあるが……」
「……っと……やっぱりここまで手をかけたら、これくらいアシも引き締めてやらにゃあな……」
……
「コレが本当にアタシの車なの!?」
「あぁそうだ、ほとんど別モンにはなってるが……」
「エンジンは5.7リッターのLS1、廃車で転がってたカマロから持ってきた。」
「4WDのままだが、パワーを受ける部分はほとんどアップグレードしてある。」
「あと内外装もボロボロだったから少し繕っておいた。」
「ありがとう……本当にありがとう。」
「いいってことよ。」
キョオッキョッキョッ、ドロォッバッバッバッバッ……
グロロォッ、グロロォ……
「やっぱりチューンドV8は良い音するねぇ……」
冬だというのに、まるで春一番のような娘だったな、と想いながらオヤジはプレハブに引っ込んだ。