梅雨を迎えた辺りで、いもならば大器の片鱗をみせる頃だが、今も尚目覚めない。もちろん僕は、仕事が落ち着いているからといって、昼寝し ている訳でもない。真面目に仕事する程バカでもない。この時期を利用して、激動の季節に溜め込んだ、休日出勤の腹いせを日々企てている。今日はこの仕事の立場の特権を利用して、仕事中に美容院へ行ってきた。髪もガッツリ茶色に染めてやった。事前に現場を全て把握した完璧なアリバイ。社長が都内へ来ないタイミングを狙った緻密な計算。今朝の髪型を目撃された事務員との干渉を避けた絶妙な会社帰還。これで美容院へ行ったのは仕事終了後、という事になる。さっぱりして現場に戻る僕。何も知らない職人達は、軽快なリズムで玄翁の音を奏でている。お疲れさまです適当な言葉を放ちながら、なにくわぬ顔で声をかけて回る。梅雨時の現場に、湿気と汗臭さが絶妙なハーモニーを織り成す中、その頭からはモンモンとフルーティーな香りが漂っていた