その日はよく晴れた日曜で。
早起きしてビール片手に部屋の掃除をしていた。
買ったばかりのCDを大音量で流しながら。
私の名前はココ、23歳。
もちろん本名ではないのだけど
いつからかそう呼ばれるようになった。
仕事は3つ。
秘書。
フレアバーテンダー。
アンティークショップ店員。
その日はよく晴れた日曜で。
午後からアンティークショップの仕事が入っていた。
スピーカーから流れていたのは
HOUSEのオムニバス。
『そろそろ支度しないと仕事に遅れちゃう』
ビールをクィーっと飲み干してゴミ箱に投げ入れると同時に
インターホンが鳴った。
私の家は誰も知らない。
家族も友人も仕事仲間も。
勧誘かご近所からの騒音苦情しか考えられないので
いつもなら居留守を使うところだ。
でも、なんとなく。
誰でもいいから何でもいいから声を聴きたくて受話器を上げる。
どちら様ですか?
「隣の家の者ですが」
あぁ、やっぱり騒音苦情か。
ごめんなさい。
でも。
『何か?』
「あの…今流れてた曲は誰の曲ですか?」
?????
『オムニバスなんでどの曲かわからないです』
「そうですか…」
『あの、よかったら貸しましょうか?』
酔いもあった。
未知の隣人への好奇心もあった。
覗き窓からどんな人か確認することもなく
玄関のドアを開く。
黄色いTシャツ。
細身なのに筋肉質な腕。
笑ったらなくなりそうな細い目。
私より年下に見えるオトコノコ。
『はじめまして』
営業スマイルは得意だ。
『さっき聴いてたのはコレなんですけど…』
「いいんですか?ありがとう!」
やっぱり笑うと目がなくなる。
・・・あの人に似ている。
『私もう出かけなきゃなので、聞き飽きたら返しにきてください』
隣人は何度もお礼を言って部屋に戻っていった。
さぁ、私も出かけなきゃ。
サマースーツに着替えて上品に見えるパンプスに履き替えて
玄関のドアを開ける。
不思議な出会いが嘘のように
静まり返った階段をカツカツ下り、
急ぎ足で駅に向かった。