俺は俺が爆発した日の事を覚えている


最低だった


最低な気分なまま


俺は爆発四散


木っ端微塵になって


そのまま宇宙の闇の中に


散り散りになって消えていったんだ


この意識はどこにあるのか


皆目検討がつかない


くだらない夜だった


また明日


あのクソみたいな職場に行って


上司に嫌味を言われ


客に怪訝な目で見られ


同僚から憐れまれる


あんな世界になんの意味があるのか


ただ俺は


何億光年も先の星に思いを馳せて


宇宙人もこうやって悩んでいるのかと


そんな事を考えていた


宇宙のことを考えると


嫌な現実から切り離されていく


それは夢中になれるからとか


そういうことじゃない


それだったら


漫画や小説、映画を見ればいい


そんなものとは違う


恐怖と期待の入り混じった


そんな感情になるのだ


例えばそれは


ありもしない大地震のことを思ったり


隕石の落下を思うことでもそうだ


そして俺の頭の中の宇宙というのは


どうしようもなく死に繋がっている


「死」


それはありふれた運命で


約束された最後で


それ以降のことなんて


多分考えても仕方ないくらいの


無について考えたくなる


この思考さえも


ただの脳の信号なんだとしたら


俺の頭の中の宇宙さえも


ただのエレメントの活動なのだとしたら


俺は死んだらどうなるのだろう


この魂は宇宙の果てを知るのだろうか


例えば眠りに落ちる時


きっと死ぬってそういう感じなのだろうか


意識がふわっと攫われて


思考がどんどん解かれていって


フェードアウトしていくように


そんな風に消えていくのか


知りたいけど


知りたくないその感覚を


追いかけていくようだ


俺はその夜爆発した


深く透明な夜に向かって


あのオレンジ色の海に向かって


柊の畝る広場に向かって


俺の翼は風を切っていく


そして俺は花火のように


こんなちっぽけな星を見下ろしながら


急転直下に爆発したんだ


なんてことない別れの言葉を添えて


俺はその時のことを覚えていて


目が覚めた頃には


また忘れていくんだ