夏と見紛うような春が


私の体を通り抜けていきました


深緑を揺らす風はいつしか嵐になって


春雷が街に降り注ぎました


校庭の裏にある雑木林で


ボヤ騒ぎがあったらしいです


そういえばあの辺には


まだ5つくらいの頃に埋めた


タイムカプセルがあったような


この街の人々は


みんな転校生みたいなものです


ここは過疎化した山村でしたが


軍の基地が出来てから


関係者たちがぞろぞろと


この街を埋め尽くしていきました


おかげで店屋が増えたので


私はそこまで悪い気はしていないんですが


でもやっぱり


新しい同級生たちは


少し怖いような気がしました


ひっぺがされた山の神様や


埋められた川の神様たちと


昔はお話しできていました


屋上から見上げた空には


大きな雲がドロドロと流れていきました


私は空を飛べる気がします


古びた送電塔を指差して


私は仲間を見つけた気分になりました


校舎中のスピーカーから


何やらハイカラな英語の歌が流れます


私はイヤホンで耳を塞いで


雑に歪ませたギターの音に


囁くような歌声に


まるで夏の暑さから逃れるように


その音の海へと飛び込むのです


時折ノイズが混じりますが


それも気にしないでいられるようになりました


明日は新しくできた美容院に


いってみようと思います


髪も染めてみようかな


とにかく私は


何かに染まってしまいそうで


それに慣れてしまいそうで


怖いような


そんな気分だったんです