高校生Hさんの告白


児童養護施設の職員とけんかして家出をしたこともありました。

職員の中には、「もう高校生なんだから落ち着きなさい。」と言う人もいます。

「そんなに突っかかるな。」ということでしょう。

でも、人が軽く言ったことでも聞き逃せないことは「今何て言ったの?」と突っ込んでしまう。

言い方も気にするけど、何気なく出た言葉に反応するんですよ。


たとえば

「私もあんたに妥協している。」

「お前らのためにどれだけ我慢したと思っているんだ。」

などと言われたり、子どもに対して仕事で仕方なくやっているって態度が見えたら、もう駄目ですね。

私たちは今の環境を選ばざるをえなかったし、来たくて来たわけではない。

でも職員は選んで職員になったわけで、そこは決定的に違うわけでしょ。

だから、そういう態度は絶対に許せない。


職員の行いで今でも嫌なのは、勝手に部屋に入ってくることです。

私がたまたま部屋で食事をしていたら、職員がまたそういう風に部屋に突然入ってきたんです。

私はもう我慢できなくなって、食べていたものを全部床に放り投げたんです。

初めは私の振る舞いに怒鳴っていた職員が、今度は突然泣きながらこう言いました。

「いままでお前の言うことを全部聞いてきたじゃないか。自分がどれだけ我慢したと思っているんだ。」


そもそも、私の何に職員が「がまん」してきたのか全然わかりませんでした。

施設に来る子供はみんなそれぞれ比べ物にならない位の事情を抱えて、それでも我慢するべきことは我慢して生きているんです。

職員は感情的になったときに「妥協している。」「言うことを聞いてきた。」「我慢してきた。」と口をそろえて言うけれど、そういうことで人を傷つけていることに気付かないんですね。

子ども同士でも我慢していることもあるし、そいうことを「我慢している。」と子供はいちいち言いませんよ。