遡ること一昔前にベンが代表作である『オペラ座の怪人』と『ラブ・ネヴァー・ダイズ』における怪人役を得てから幾久しく、さらにはアレクサンダーがオペラ歌手として軌道に乗るまでの間というもの、彼らルイス兄弟は多岐にわたる分野で精力的に仕事をこなした。そう言うだに平易でも活躍振りには目を見張るものがある、一例としてオペラは無論のことミュージカルに台詞劇それに声優業などその功績を数えようとすればそこに暇はない

 

ともに映像媒体類にも出演歴を持つ2人ではあるものの、特にベンにおいてはその経験が顕著だ。彼は少なくとも二か国の長寿ドラマにゲスト出演しており、その足跡を容易に確認することが出来る。ああ、なんだかA.L.氏出演作の劇評を翻訳する流れで書いたら、やけに硬い文章になっちゃったな。散々に言葉を尽くしたけれど、ただ言いたかったことは「ベンってすごいね」ってことなの分かって

 

 

唐突に投入されたカンフル剤として主要カップルに脅威を持たせる存在感ある密通者を演じてる。さまざまなインタビューを読んで受ける印象とは正反対と言っても差し支えなさそう。ここで誘惑のために費やされる歌唱力が才能の無駄遣い過ぎて…例えるならデュラムセモリナ粉を惜しみなく使用したたこ焼き、どう見ても過積載なほど小鉢に無理やり乗せられた大盛りのラーメン、それと手間暇を掛けたブフ・ブルギニョンに注がれる清流を汲む軟水、しっかりと中心部にまで火を通したプライムリブ…況や「掃き溜めの鶴」ってところかな

 

そういえば、彼の出演歴を眺めていたら『アニーよ、銃を取れ!』にも出演してるのね。個人的に最も好きなミュージカルなので、これは悦ばしいことだな。ただ、何処を切っても自信自意識共過剰でドチャクソ陽キャなフランクを演じるベンなんて「想像もつかないな」って思っていたら、

 

 

なんと映像が残っていたっていう。そりゃあ話題作だったようだし、そうであっても何ら不思議はないけれど、何せA.L.氏の出演作の中には写真さえ覚束ないものも多いので、これはうれしい誤算だった。彼のフランク像は、映画版でハワード・キールが呈示したそれと大分違うね。恐らくはキールとキール・ロワイヤルくらいに懸け離れてる。どっちが好きかなんか好みでしかないよ

 

それにしても…つくづくベンには南部訛りもお手の物と見える。いわゆる英国や豪州の俳優たちがさまざまな階級やそれに基づく地域を表す発音に長けてるのは周知の事実ではあれど、その法則性がミュージカル俳優にも適用されるだなんて考えたこともなかった

 

 

「もしかして」って期待して"They Say It's Wonderful"の動画を探したものの撃沈したっていう、一旦持ち上げてから落とすな。あれがミュージカル作品中の二重唱の中で一番好きだよ、あの聴かせどころで冴えわたるルバートに恋愛の緩急が凝縮されているようだ。きっとベンの包容力にあふれた歌唱力は素晴らしかっただろうなあ

 

実際の性格がどうあれ、もしかしたらベンには陰影の色濃い役柄の方が似合うのかも知れないな。そこが陽キャやジョックを得意とするA.L.氏との最大の差異と言えるかも。往年の名画『ペギー・スーの結婚』ファンには分かってもらえるかも、もしA.L.氏がニコラス・ケイジが演じたチャーリーなら、ベンは一匹狼のマイケルって感じだよね。いつか生きてる内に共演してくれるのを気長に待つことにする、それしか出来ない