常日頃メトロポリタン・オペラ(以下MET)会員としてON DEMAND配信の視聴をするに飽き足らずに、「なにかアレクサンダー・ルイス氏の出演作がMETライブビューイングにてアンコール上映されないものかしらん?」と思って公式サイトを訪ねたところ、なんと本国シーズンブック&映画館上映(劇場)用プログラムが販売されているのを発見。恐る恐る覗いてみたらAL氏が出演したシーズンのそれもあったので、もちろん即購入したってわけ

 

普段はamazon primeや楽天ダイアモンド会員特典の翌日到着便に対して「そんなに急がなくていいよ。それより安全運転や万全な体調を心掛けてね。皆さん、お仕事お疲れさま」なる心持ちゆえに発送元や配達員に文句を述べる人非人を軽蔑していたというのに、今回はじめて「なるべく早く届けてよ…。それでも安全運転や万全な体調は心掛けてね…。皆さん、お仕事お疲れさま」と焦燥感を覚えるほどには余裕を欠いていたようだ。そう思うだに、私にはこれまで本当に欲しいものなんてなかったんだな

 

そうして届いたメール便は、それ自体があまりにも愛おしすぎて、ほぼ誇張なく受け取ってからすぐに開けられないまま抱えて一夜を共に眠った。まあ、その僅かなる誇張を取り払って言うなら、はじめて彼に関する情報に日本語で邂逅するに当たって心構えが必要だった。たった数日とは言え待ち詫びた存在が愛おしいのはそのとおりだったけれど、それを開封する勇気を得るべく手許に置いていたら酩酊して寝落ちしてしまっただけ

 

翌夕前に仕事から帰って、またワイングラスを満たしたら、今度はそれを祝杯にするべく漸く開封したんだよ;

 

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彼の出演作である『鼻』が上演された2013−14シーズンと同じく『メリーウィドウ』の2014−15シーズンの劇場用パンフレット。実はもうすぐ国内における通販取り扱いが終了だそうで…その刻限に間に合ってよかった、昔招聘演奏した劇場を何となく懐かしく思って足を運んでみたら、その日が解体工事施行初日だったことがあるよ。そうなんだ、私ってツイてる!

 

肝心の内容は、総合的に鑑みて無難な仕上がりと言えるかな。全体としてその初心者に対してオペラ自体の敷衍を目指している点と詳密度は評価する。それぞれの作品の概要や見どころも要点を押さえてあって分かりやすく、つまりは作品ガイドに准ずる読み物として非常に優れてる

 

ただ…アレクサンダー・ルイス氏の紹介文における氏名の表記が「アレキサンダー・ルイス」だった。やれやれ、これは由々しき事態だ。だって、それじゃあ真実とも異なるし報道協定由来の伝統からも大きく外れてる。私が認識する限りでは本人の発音するところによれば「アレクザンダー」であるからそれに倣いたい欲求を抑えて『記者ハンドブック』に推奨された「アレクサンダー」表記に則ってそうしてるのに! 以前の推しが初来日した際の小澤征爾音楽塾然り、せめてプロの監修させるなりそもそもライターに外注するなりした方が賢明だよ。誰でも文章を書けるからこそ、その細部に宿る意匠が物を言うんだ。誰もが旋律を諳んじることは出来ても他人の心を奪うことが叶わないのと同じ

 

それから『メリーウィドウ』に至ってはキャスト紹介の掲載が指揮者/演出家/主演陣4人+カミーユ・ロシヨン役のアレック・シュナイダーだった。しかも、その紹介順はMETライブビューイングのクレジットや公式サイトによる作品の紹介ページに書かれたそれらのどれとも違う。これはあれだな、恐らくと言わずに配信元である松竹に特有の特別出演扱いなんだろうな…。それについては斟酌するにしてもカスカダ子爵やサンブリオッシュさらにはクロモーやボグダノヴィッチは? あんなに類稀なる舞踊と歌唱で喝采を攫った小鳥たちは? そもそも狂言回しのニェグーシュ役に触れないなんて、まったく以てどうかしてるよ!

 

普く世界中から呼び寄せて育て上げた若手の中から次世代のスター歌手を生み出そうとする配慮に余念のないMETの意向に倣った掲載法とは到底思い難いな。おい松竹、そういうとこだぞ