⚠冗長である上に中身がないので読まない方が御身のためです⚠

 

 

 

これまでの人生で冗談じゃなく『オペラ座の怪人』を観たことがない。こう言うと語弊がありそうだから訂正しよう、「私は『オペラ座の怪人』のミュージカル版を観たことがない」。その原作は小学生時代に児童文庫版で読んだし、いつかロバート・イングランド主演版のどちゃくそ強い怪人が暗躍する映画も観た。だから、同作品のあらすじくらいは理解してる

 

別にその機会に恵まれなかった訳じゃなく、まだ大学生の頃に同ミュージカル版が映画化されて当時の彼氏がDVDを借りて来てくれたのに、隣で観ながら鼾を掻いて寝落ちした。もし私がクリスティーヌだったら、あまりの寝息煩さにそのままラウルへ返品されること間違いなし。そうして目覚めた私に「もう一度観直す?」と訊ねた思い遣りを突っ撥ねて折角の厚意を無下にした、彼はこんな女をよく返品せずに結婚しようと思ったものだね

 

その後こうして時を経てオペラ歌手を推すようになって、彼の最初期の代表作が『オペラ座の怪人』だったことから、毎朝の通勤時に彼の歌唱曲を聴いてる。そうした中で「はじめて同ミュージカル版を観ようと思う」と告げたら、にべもなく夫は「あのオペラ歌手が出てるんだね」なる返答で最早慣れたもの。断じて「Christene...Why!?」とは言わないのだった

 

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さて、いざ同作品を観るって決めたのだから、なにかと準備が必要よね。そもそも原作を読んで映画を観たとは言ったって、それも昔のことだから事実誤認や忘却の彼方に追い遣られている知識も多いかも。これまで改めずに来たなら、このまま実作品に触れて行く中で学んで行った方がいいかもね。とりあえず、現段階で私が把握していることやそれに関する疑問点を纏めてみることにする

 

齢8歳の時に読んだ児童書のあらすじ覚え書き;

 

華やかなりしベル・エポック時代のパリ。「花の都」に暮らす人々は芝居を楽しみたい時には共和国劇場(コメディ・フランセーズ)へ、社交を嗜む際にはオペラ・コミーク座へ、どちらも堪能する夜には随一の称号に相応しいガルニエ宮(パリ・オペラ座)を訪れる不文律があるという。昨今もっぱらオペラ座が盛況である理由は新進気鋭のソプラノ歌手クリスティーヌの人気によるもの、久し振りに遊学から帰って子爵位を就いだラウルは彼女が幼馴染であることに気付いて終演後の楽屋を訪れる

 

その美貌も然ることながら類稀なる美しい歌声と確かな技術を誇るクリスティーヌには謎の失踪歴があり、それから歌姫として頭角を表すようになったことを誰も知らない。彼女は「音楽の御使い」に攫われて教育を施された事実をはじめてラウルに打ち明けるも旧交を深める二人にはやがて恋が芽生える

 

実はオペラ座には怪人が棲んでおりその存在は公然の秘密である。彼女にとっては恩人である「音楽の御使い」の正体こそはこの怪人であった。彼は秘密裡にクリスティーヌを思慕し、その支援者たるべく助力を授けていたという。そうした事実を突き止めたラウルは、ここオペラ座で起きた一連の怪事件の犯人である証拠を掴んだ上で、彼に対する嫉妬に狂う怪人と対峙する

 

現在の輝かしい栄光を築いてくれた恩人と将来を誓い合った恋人の決闘を止めようとするクリスティーヌに、怪人はそれぞれサソリとバッタが描かれた2枚のカードを差し出し、「自分と結婚するか」「ラウルを見殺しにするか」の決断を迫る。「貴方と結婚するからラウルのことだけは助けてほしい」と懇願するクリスティーヌ、その自己犠牲心に感銘を受けて身を引こうとした怪人に彼女は別離の言葉を伝える代わりに口づけを与えるのだった

 

それから僅かな年月が過ぎ、そこに集う人々はオペラ座の怪人の存在を忘れ、かつての盛況が舞い戻っていた。今夜も観客のお目当ては歌姫クリスティーヌである。彼女の歌声を心待ちにする彼らは足早に客席へ急ぎ、その足許で何を踏み付けにしたとしてもそんなことは気にも留めない。その入口で汚泥に塗れ破れかけた紙屑は新聞記事で、そこには辛うじて判読できる文字でこう書かれていた;

 

「とてつもなく醜い男の遺体見付かる、この上なく安らかな表情で」

 

大体こんな筋書きだったように記憶してはいるものの、何分もう昔のことなので多々誤りがあるだろうな。ここに書き切れなかった部分で覚えているのは、これは今でも鮮明に思い出せる事柄として「怪人の仮面が土気色」「クリスティーヌが金髪」「怪人とクリスティーヌのキスの挿絵に片側ページまるまる割いてた」こと

 

それから、冒頭が怪人の幼少時の身の上話からはじまって、その描写がやたらに具体的だった。「実母は私に癇癪を起こし、実父はこの醜い顔ゆえ家庭を去って行った。義父からは気分で殴られ、その後に売り飛ばされたサーカス団では団長から鞭代わりの革製ベルトで打たれた」みたいな…私の父親も天気屋かつ昭和の体育会系脳筋男子よろしく体罰なんか当たり前だったから、この児童書に親しんだ当時は最も登場人物中で怪人に共感を覚えたことを思い出した。それから十年経たない内に私のラウルを見付けられてよかったよ。…待って、私が怪人ならこれはじゃブロマンスになっちゃうな

 

それはともかくとして、私が『オペラ座の怪人』について知ってるのは、この(恐らく本来とは異なるだろう)あらすじとアレクサンダー・ルイス氏が歌唱した数曲のみ。すなわち曲自体を聴いたことがあってもそれに至るまでの展開や曲順のことは、まるで分からないってこと。そんな状態だからだろうか、この物語引いてはミュージカルに関しても疑問点だらけで……

 

『オペラ座の怪人』初心者の疑問点;

*どうして一介の踊り子だったはずのクリスティーヌとシャニュイ子爵御子息のラウルが幼馴染なの?

*怪人の「武芸に優れる」なる一言では説明が付かない万能振りの理由は何? まさかサーカス団にいたからってだけじゃないよね? 何かしらの具体的な余聞(ex; 自分を愛してくれなかった両親に復讐したいとか)があるんですか?

*彼は『ノートルダムの鐘』のカジモドのように生きる術を知らない男ではありませんよね。ただ醜いだけならそれと公言して仮面を付けたまま生きるって選択肢はなかったの? 何らか人前に表立って出られないような疚しい理由でもあるんですか?

*"All I Ask of You"の歌詞中に登場する"freedom"の単語を耳にするたびに気になってる。先述したあらすじを踏まえた私の理解では、この時点で怪人とクリスティーヌの繋がりは切れてるはずなのに、一体何から自由にさせる気だ?

*そもそも怪人はどうしてクリスティーヌに恋したの?

 

今おおまかに挙げるとしたら、おおよそこんな感じかな。これらの中でも一番気になってるのは最後の疑問で、「なぜ怪人がここまでクリスティーヌに固執するのか?」を知りたくて堪らないよ。だって、生来ゴシップ記事が大好きで、その各界著名人たちの馴れ初めで過去にブログ記事まで書いてる。誰にも知らせたことはないながら、これまでにさまざまな作曲家や歌手らの馴れ初めを架空の小説に起こしてきた。無論のことAL氏もその例外じゃない

 

私が予想(に留まらず期待)する怪人がクリスティーヌを見初めた理由;

 

類型1)『ジェイン・エア』のジェインとロチェスター

この作品中で、彼女の雇い主であるロチェスターは「君は美人ではない」とジェインに明確に告げている。怪人がクリスティーヌの容姿に惹かれていない訳はないので、これは些か無理があるかな。とはいえ、どうあれ生活に疲れたロチェスターにとって自我を持ちながらもたおやかで身持ちが固いジェインは清涼剤であったはずなので、もしかしたら怪人がクリスティーヌに向けた愛情もそれに近かったかも?

 

類型2)『嵐が丘』のキャサリンとヒースクリフ

いわゆる不遇な幼少期など怪人とヒースクリフの共通点は多いように思える。しかしながら、怪人はクリスティーヌよりも年嵩だよね…。もし幼女期のクリスティーヌが鼻持ちならない態度で怪人に接した結果として、彼を魅了する可能性はない訳じゃないだろうけれど、それが公的な馴れ初めとして国際社会で喧伝されるのは難しいはずだよ。そもそも『嵐が丘』の世界は完結され過ぎていて再現するのは困難だ

 

類型3)『風と共に去りぬ』のスカーレットとレット

「何が午餐用の衣裳よ、私にはこっちの方が似合うから着たい時に着るだけだわ」と現代的に考え、たとえ周囲に眉を顰められても自我を貫き通し、その狙いどおりに男たちを傅かせるものの満足せずに、ひたすら意中の相手を追い求める。こう書くだにクリスティーヌとは似ても似つかないな。しかし、彼女に惹かれるレットにとっての動機は「生命力あふれる自由な精神」だから、怪人と言わず万人に適応できそう

 

類型4)『赤と黒』のジュリアンとレナール夫人&マチルド

この世の中にはさまざまな愛があるよね。それを踏まえれば、かつて怪人に愛を誓い合った相手がいなかったなんて一体誰が断言できるだろう。もし彼にサーカス団在籍中に恋人がいて、その相手と別離を強いられたとしたら、これは前述した疑問点に対する「怪人の強さを解明し得る答え」には充分かも知れないな。もっともその場合およそ3時間の物語ではクリスティーヌは添え物になってしまうから有り得ないね

 

類型5)『源氏物語』の藤壺と光源氏

同原作が書かれた時代や土地とは懸け離れた作品だ、それでも私にとってはこれが最も合点を誘う答えだったよ。まるで怪人とは異なり貴族社会の中心に生きる光源氏ではあるものの、同じように万能な人物として描かれている。そして、これもまた同じように実母からの愛に飢えている。彼女を思わせる自分には手に入らない女性に懸想し、その偏愛の対象によく似た理想の相手を作り出すことを試みる…これじゃね?

 

これまでの決して短くない人生で観て来なかったくせに、現在では『オペラ座の怪人』について知りたいことがたくさん! 彼がラウル役にて出演している動画から観はじめることは容易いとはいえ、最初に観賞した作品を絶対視してしまう個人則を割けるべく映画版から無難に観賞して都度にこの記事に対する答え合わせや雑感などを纏めて行けたら