さて、毎週火曜日はオペラ関連ニュースの日。これを書いている傍らでは先般に発表された大谷翔平選手の結婚の話題で今以てなお持ち切りだ。「そりゃあおめでたいかもしれなくても一野球選手の新妻なんかによく皆そんなに興味を持てるね」って思いはあれど、これが推しの選んだ相手ならって考えたら、その気持ちも確かに分からないではなかったよ

 

我が推しは才能あふれるバリトン歌手として世界中から引く手数多、一般的に見目麗しい部類に入るのだろうし、こうして垣間見える限りではすこぶる賢い上に人柄も申し分ないから、その生涯の伴侶くらいは分かりやすい悪女だったら面白いとは思いつつ、実際にはとんでもない人格者なんだろうな…と、ここまで書いたところで自分でも気持ち悪すぎたので、さっさと本題に入ります

 

 

More performances announced for 2024

毎夏イングランドで開催されるグラインドボーン音楽祭は、その驚異的なチケット収益のため『ジュリオ・チェーザレ』の追加公演上演とそれに伴って次世代に向けたUnder 30チケットの発売を発表した。同音楽祭の代表取締役と芸術総監督は共に「ここ10年で最高益」「昨年比にして3倍近い売上数」であることを認めている

既にお伝えしたようにイギリス芸術評議会からの提供資金削減によって、これまでどおりにイギリス各地におけるツアーを巡ることが困難になったことから、本来の「オペラを通じて市井を豊かなものに」とする原理に立ち返った演目などが功を奏したと見られる

 

Saudi Announces The World’s Largest Grand Opera in Arabic – Zarqa Al Yamama – to Premiere in 2024

「聖なるふたつのモスクの守護者」ことサウジアラビア王国は、自国が手掛けるはじめてのオペラ大作として『ザルカ・アル・ヤママ』の制作を発表した。この記事中にも記載のあるとおりにイスラム教伝播以前の古からアラビア半島に伝わる伝説やそれを基に伝わる叙事詩として国際的にも著名である題材であることから、その制作および上演にはそれに相応しい人材を迎え、そうした事実を示すように主要キャスト陣中3人はサウジアラビアが擁する歌手になる予定である

これまでにオペラを何作も観てきたものの、けだしアラビア語上演なる作品はその類を見なかった。今年4月上演とのことでそう時を待たずして歴史的瞬間を拝めそう

 

Esa-Pekka Salonen to leave San Francisco Symphony, citing dispute with orchestra's board

現在サンフランシスコ交響楽団を率いるエサ=ペッカ・サロネンが来シーズンを最後として音楽監督退任を発表。彼はこれまでに通算5季を務め、今後も関係性を継続すると見られていただけに、この彙報は業界内では少なからぬ衝撃を以て迎えられているよう。件の指揮者はまた「経営陣と同じ視点を持つことが難しい」として、彼らとの不和も匂わせている。同団経営陣も概ねこれを認めており、主に財政面をはじめとする経営上の視座をして彼なりの芸術を追究する障壁になった点が主因のひとつか

自ら作曲も行う傍らタクトを執る指揮者は少なくないとは言え、その音楽界における立ち位置は無二のそれである同氏の今後の動静を注視したい

 

Grammy-Award Winning, MET Opera Legend Leona Mitchell Live in Concert

30 years after firing, a soprano returns to the Met Opera for a recital

この春、ふたりの歌姫がニューヨークへ戻ってくる。既にその才能によって名声を手に入れた彼女達は、それぞれの理由によって同地から遠ざかっていた。かねてグラミー賞を受賞し幅広い音楽ジャンルを歌い熟こなすことで知られるレオナ・ミッチェルは故郷であるオクラホマに軸足を置いた活動を行っているものの今年4月のコンサートで、一方のキャスリーン・バトルはたびたび伝えられていたディーバ的振る舞いの末に当時の同歌劇場経営陣との衝突によって解雇を言い渡されていたが今年5月にリサイタルのためにメトロポリタン歌劇場に、それぞれカムバックを果たす予定だ。現時点においては、いずれもストリーミング中継の有無などについては明記されていない

 

 

そのほかの話題として、「かねてエアフルト歌劇場が予定していた『ニーベルングの指環』4部作上演をキャンセルへ(私が知る限りで今シーズンだけで3例目)」、「フェニーチェ劇場でガザ停戦呼び掛け(スカラ座やサン・カルロ劇場などに続いて南欧に集中している理由を考えるだにやるせない気持ち)」のあたり

それがニュース上の特性であることを承知してはいてもやはり朗報ばかりとは行かないのが歯痒く辛いところである。とはいえ、今週は大きな訃報や引退ないしはそれらの噂もなかったのは現状を鑑みるに良しとするべきなのかもしれない