バスの運転手が停留所に止まるのを忘れたら、それも西鉄の主要駅にあるバス停に止まりそびれたら、たぶん考えるだけでおぞましいし、頭がグラグラする。乗用車だったら脇に止めて、隙を見てUターンするということになるのだけれど、バスはそんなわけにいかない。
私は運転席から2つ目に座っていました。
「あれ、おれ、ぼっとしてた?」
と、自分自身半信半疑のなか、彼はもうすぐ次のバス停に止まる寸前に、
「あれ?!!!」
と声をあげて気が付いた。
すぐさまハザードランプを点滅させて、謝ったうえで、営業所と連絡をとって、指示を仰ぐ。
営業所は回送の状態にして別の路線が通っているJR駅まで行き、そこでグルっと回転させて西鉄駅まで戻りなさいという指示。それは適切だと思う。声が聞こえるのだけれど、無線の向こうも動揺している気配はない。
私は、こういう大変な状態で、何か声をかけて落ち着かせる場面が来るかもしれないということで、そのまま乗っていました。
交差点で左右確認をするときに彼の顔が見えます。30代だと思います。しっかりした表情です。アナウンスもしっかりしています。私が道を間違えたため、16分も遅れて大変ご迷惑をおかけしました。震えることもなく、言い訳がましくもなく、よくできたと思います。
下りる時、よく頑張りましたね、と声を掛けたのですが、私自身泣き声になってしまいした。
通路を挟んで左側の席に座っていた女性客も、同じ停留所で降りたのですが、私と同じ意見でした。
「でも、交差点で、遅れているせいか、ちょっと無理しましたね」
「確かにね、でも次の交差点では『行ってもいいんじゃないの』というところで止まりましたね」
失敗に気付いたんですね。
たぶん、彼にとって、彼の人生にとって、いい経験になったのかもしれないし、そう望んでいます。