ここは真っ暗、押入れの中。

そこにはほこりをかぶったプラスチックのケースの中に入れられたフランス人形がいました


このフランス人形はこの押入れの中で長いこと暮らしているため

周りからは“押入れ姫”とよばれています。


今日も押入れ姫はたまたま近くにいた除湿剤に愚痴をこぼしていました。


「あ~、退屈退屈。

なんで押入れの中ってこんなに退屈なのかしら。」


除湿剤はおなかにたまった水をぴしゃぴしゃいわせながら言いました。


「そりゃここは押入れだもの。

用のないものを入れておくところさ。」


そもそも押し入れ姫は昔はたいそう可愛がられてました。

しかし、持ち主の娘さんがお嫁に行ってしまったとたん、この押入れに入れられてしまったのです。


そんな遠い日の思い出にふけっていると、押入れ姫はだんだんはらがたってきました。


「そうよ、このままだといずれアオカビの住家になって、シミの餌になってしまうわ。

いっそうのことあたし達の存在を家族に思い出させてあげないと。」


押入れ姫はケースからでると、周りのおもちゃや日用品たちを起こし始めました。


「あたし達の存在を示すために、今晩は大暴れしてやりましょう。」


押入れ姫はミとラの音が出ない壊れた笛を高らかに掲げていいました。


そうすると、ぞろぞろとおもちゃの兵隊たちが前に集まってきました。

どうやら、押入れ姫の手下みたいです。


「軍曹、大暴れするとはどんな作戦でありますか。」


兵隊の中の一人が言いました。

すると、押入れ姫はくるっとふすまの方へひるがえし、ふすまを開けて言いました。


「そんなん、かたっぱしからぶっ壊してやるに決まってるじゃない。」


押入れ姫は意気揚々と外へ出ると、兵隊達もそれに続きます。

そして、まず第一目標のキッチンへと歩き始めました。


次第に足なみがそろい始め、それに合わせてみんなで行進曲を歌い始めました。


「♪さぁ行くぞみんな 懐かしい日々と 光をつかむために

武器を手にとって 壊しにいくぞ 最初は台所だ♪」


ついに到着してしまいました。


ピー!

押入れ姫が笛を力いっぱい吹くと、兵隊たちは思いっきりキッチンの物を壊し始めました。


食器にテーブル、コンロからテレビまで、ありとあらゆるものを凄い勢いで壊していきます。


あまりの騒がしさに家族はびっくり仰天。

あわててキッチンにいき電気をつけると、そこには無残な光景が広がっていました。


そして、たくさんのおもちゃたちが倒れています。

どうやら押入れ姫達は明るいところでは動けないみたいです。


家族はおもちゃたちをみて気味が悪くなりました。


「きっと呪われた人形にちがいない。」


お父さんは目にとまった押入れ姫を拾いあげると、ゴミ箱へポイッ。


ついに押入れ姫は捨てられてしまったのです。



あなたの家にもほったらかしにしている物はありませんか?

もしもあったら、いつか仕返しされるかもしれませんね。



                                   ~おしまい~








ある日、一匹のねこが昼下がりに散歩をしていました。

今日はとても良いお天気です。


すると、遠くの方から何かがコロン、コロン

そして、ねこの足元にコツンととまりました。

良く見るとそれは、何かのたまごでした。


「にゃにゃ、これはきっと迷子のたまごだにゃん。

早くお母さんのところへ返してあげよう。」


ねこはたまごをコロコロ転がしながら賑やかな街中までやってきました。

ここならすぐにお母さんが見つかりそうですね。


すると、ねこのところへ一匹のいぬがやってきて、こう言いました。


「それはぼくのたまごだわん。

きっと中から可愛いちびワンが生まれてくるのさ。

さぁ、おいで坊や。」


しかしねこは


「そんなことないよ。

だっていぬはたまごなんて生まないもの。

きっと君はこれを目玉焼きにして食べちゃうつもりだろ?

そうはいかないさ。」


そうするといぬはとぼとぼと帰っていきました。


次は、サングラスをかけたファンキーなぶたがきました。


「それはオイラのたまごだぶー。

きっと中から超ファンキーなぶたが生まれてくるのさ。

さぁ、カモンボーイ。」


しかしねこは


「そんなことないよ。

だってぶたはたまごなんて生まないもの。

きっと君はこれをだし巻きにして食べちゃうつもりだろ?

そうはいかないさ。」


そうするとぶたはとぼとぼと帰っていきました。


次は、ずいぶん遠くの方からうまが走ってきました。


「それはわたしのたまごだわ。

きっと中からとっても足の速い仔馬が生まれてくるのよ。

さぁ、おいで坊や。」


しかしねこは


「そんなことないよ。

だってうまはたまごなんて生まないもの。

きっと君はこれをオムレツにして食べちゃうつもりだろ?

そうはいかないさ。」


そうするとうまはとぼとぼと帰っていきました。


次は、ドシン、ドシンとぞうがやってきました。


「それはわしのたまごだぞー。

きっと中から耳の大きなダンボちゃんが生まれてくるんだ。

さぁ、おいで坊や。」


しかしねこは


「そんなことないよ。

だってぞうはたまごなんて生まないもの。

きっと君はこれをゆで卵にして食べちゃうつもりだろ?

そうはいかないさ。」


そうするとぞうはとぼとぼと帰っていきました。


次は、りっぱなたてがみのライオンがやってきました。


「それはオレ様のたまごだぜ。

きっと中からりっぱな跡取りが生まれてくるんだ。

さぁ、おいで坊や。」


しかしねこは

「そんなことないよ。

だってライオンはたまごなんて生まないもの。

きっと君はこれを今朝しとめたニワトリと一緒に親子丼にするつもりだろ?

そうはいかないさ。」


そうするとライオンはとぼとぼと帰っていきました。


気がつけば辺りは夕焼け。

それでもお母さんは見つかりそうにありません。

ねこはくたびれて前足をおろしました。


すると突然、たまごがピョンと飛び上がりました。

今にも生まれそうです。


パカン。


ついにたまごが割れてしまいました。

ねこはゴシゴシとめをこすって見直すと、そこにいたのはアヒルの赤ちゃんでした。


「君は、アヒルのたまごだったんだね。

さぁ、暗くならないうちにお母さんのところへお帰り。」


しかし、アヒルの子はねこをじっとみつめると

「ママ!」と叫びました。

どうやらねこをお母さんだと思い込んでしまったようです。


「ぼくは君のお母さんじゃないにゃん。」


しかし、アヒルはねこから離れようとしません。


仕方なくねこは、このアヒルと一緒に暮らすことになりました。

今日もねこは美味しそうなアヒルを目の前に我慢の一日を送るのでしょう。



                                  ~おしまい~