さようなら、伊藤のおじいさん(仮) | 緑組の日々

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我が家が
今の家に引っ越してきたのは、
去年の夏。
出産前ギリギリの
駆け込み転居だったわけですが。


急いで探して選んだわりに、
私も夫も
結構気に入っております。


全10棟の
建売住宅だったのですが、
ここは最終1棟。
つまり、
売れ残りとなるわけです(笑)


値下げもされずに
3ヶ月ほど残っていたらしいのですが
我が家としては、
もう値下げされなくとも
ここが良い!と
直感的に気に入った物件です。
売れ残りだけど、
悪くない!
というか、好きで。


建物もそうなんですが、
何と言いますか…
地域の人たちのお人柄?も
良さそうだな〜なんて
思ったわけです。



元々は、
畑だった土地。
その畑の持ち主が、
10棟の最南端に家を構える
伊藤のおじいさん(仮名)です。


内覧に行った際も
伊藤のおじいさんが声をかけて下さり、
それで
「地域の人たちのお人柄も…」と
好感を抱いたわけです。


伊藤のおじいさんは
ご高齢のため、
畑仕事が出来なくなってきて
土地を売ったんだとか。


それでも、
庭にある小さな畑で
お野菜をせっせと作っては
私たちに振舞ってくださいます。


毎朝
幼稚園へ行く子どもたちにも
声をかけて下さり、
「行ってらっしゃい」
「いってきまーす!」
と気軽に挨拶できる間柄。


うちの子どもたちは
伊藤のおじいさんの畑が好きで、
いつも覗いて見ては
「かえるだ!」
「バッタだ!」
と、大騒ぎ。


するとおじいさんは、
顔色一つ変えずに
素手でバシッ!と捕まえて…


子どもたちや私の
大歓声や悲鳴を浴びていました
(笑)


先週、
物置小屋を片付けていらして
沢山のゴミ袋があったので、
「ゴミ捨て場に
持って行きましょうか〜?」
と声をかけたところ、

「いやー、こいづは重いっちゃ。
大丈夫だっちゃ〜」


と笑顔で断られ。


そのゴミが、
震災の時に家中で崩れて壊れた
家財道具で、
ようやく片付ける気になった と
穏やかに話して下さいました。


3日ほど前、
私が車で出掛ける際に
伊藤のおじいさんとすれ違い、
いつものように
私が笑って手を振ると、
おじいさんも
いつも通り
笑顔で手を挙げて下さいました。
これがまたカッコイイ。


……


それが
私が見た伊藤のおじいさんの
最後の姿になりました。



突然。
本当に突然。



それまでがあまりに普通で
お元気そうだったので。
信じられなくて。
ショックです。


でもね。


私、すごいなーと思うんです。



この地域も高齢化で
地域の行事や清掃がままならなく
なっていたようですが、
そこで
自分の畑を手離して、
私たちのような若い世代が
入ってきたのが、去年。


おじいさんがご好意で
やって下さっていた
公園などの整備も、
今年からは皆で協力するように
決まりました。


家の中も最近、
おばあさんの為にリフォームしたと
おっしゃっていました。


さらには先週、
震災後の
物置小屋の片付けも終えられて。



…ここまで
きちっと身の回りを整えて
旅立たれたんですよ?


もう、
純粋に すごいなぁ と。
きちっと真面目に
生きて来られた方なんだと思います。


寂しいです。
悲しいです。
だけど、
その人となりを
益々知る事ができました。



大好きでした。
さようなら、ありがとう。
伊藤のおじいさん(仮)