応用美術の著作物性について述べた判例

原則、服の組み合わせに著作権はありません。

 

 

 

ファッションショー事件(平成26年8月28日判決言渡)

 

【当事者】

控訴人(原告):有限会社マックスヴェール(ファッションショーの運営会社)

        A(主催者、モデル)

被控訴人(被告):NHK

 

【判決】

控訴棄却

 

【事案の概要】

H21 6/6原告らが「シティーやリゾートのパーティ」をコンセプトとしたファッションショーを開催

株式会社JFCCが原告らの許諾を得たうえでファッションショーを撮影、自社のネットワークで放送(撮影した動画の著作者は株式会社JFCC)

株式会社JFCCが撮影した映像をNHKに渡し、NHKの番組内で40秒程度放送された

上記NHKによる放送は控訴人らの著作権を侵害するとして提訴

 

【原告が著作権を主張したもの】

①    個々のモデルに施された化粧や髪型のスタイリング

②    着用する衣服の選択及び相互のコーディネート

③    装着させるアクセサリーの選択及び相互のコーディネート

④    舞台上の一定の位置で決めるポーズの振り付け

⑤    舞台上の一定の位置で衣服を脱ぐ動作の振り付け

⑥    これら化粧、衣服、アクセサリー、ポーズ及び動作のコーディネート

⑦    モデルの出演順序及び背景に流される映像

 

 

・ファッションショーで着用された服はほとんどが『FOREVER21』のもの

・背景の映像の著作者は誰かわからない

 

【判決】

[①~③の著作物性]

服やアクセサリーは応用美術。FOREVER21で売られているものなので原告は権利を有しない。

服や化粧、メイクの組み合わせは『シティやリゾートのパーティ』に参加するためのコーディネートなので実用目的であり、それと分離した美的特性も認められないので著作物ではない。

[④~⑤の著作物性]

・振り付けも他のファッションショーで見られる動きなので著作物ではない。

控訴人らは,上記ポーズ又は動作の特徴的な点として,モデルが紙袋を持ったり,右の手の平を広げて耳に当てる行為や,両手の平を上に向けて観客をあおるようなそぶりを指摘する。しかし,控訴人らの主張によれば,これらの動作は,本件ファッションショーの中でギフトを与え,スポンサーであるメイベリンがサンプリングを行えるようにするためのもので,観客のスクリーミングを誘うなどの目的でなされたというのである(原審における2012年12月21日付け原告ら第2準備書面16頁ないし17頁)。そして,上記目的のための表現として上記ポーズや動作をすること自体は特段目新しいものとはいえない。

[⑥の著作物性]

①    ~⑥が著作物ではないから著作物ではない。

[⑦の著作物性]

・背景の映像は著作物だけど、著作者が誰かわからないから原告は権利を有しない。

 

原告の主張の中で、著作物は背景の映像のみ。そして背景の映像も権利者が不明なので原告の主張には理由がない。

 

 

【考察】

・服の組み合わせでなんらかのアートを表現したような場合、著作物性が認められる可能性がある。かっこいい・かわいい組み合わせなどには著作物性がない。

・動作が舞踏の著作物として保護されるには、動作の目的に対してどれだけ個性が表現されているかを考える。演劇の場合、その動作で観衆に伝えたい内容と、伝えるためにいかに独特の表現方法を用いているかを考える。

・背景の映像の権利を原告が有していたなら、原告が勝てた可能性がある。逆に誰が権利者かわからない映像を使用しているということは、権利者から訴えられる可能性がある。原告は上映権侵害、NHKは公衆送信権侵害。

 

【原告らが提訴した理由】

自分たちが知らないところで自分たちが主催したファッションショーの映像が譲渡されて放送されたことに腹が立ったのかな・・?

 

 

ここまで読んでいただき、ありがとう!

それではっ!


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