坂口良子さん突然の訃報 | 今日も映画馬鹿。

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映画あれこれ。ときどき音楽。たまに戯言。おまけに麺。






あまりにも急すぎて

かなり驚いています。





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女優の坂口良子さんが突然57歳で逝ってしまいました。





自分は、市川崑監督の金田一耕助シリーズに出ていた

坂口良子さんが大好きでした。

犬神家の一族
獄門島
女王蜂

以上の3本に出演していますが

特に「犬神家の一族」で石坂浩二さん扮する金田一耕助が宿泊する

那須ホテルの女中はる役が本当に好きで好きで...



ドロドロとした事件の中にいて

カラッと明るい一服の清涼剤の役割を果たしていました。





想い出に

その「犬神家の一族」で

坂口良子さんが登場している場面のシナリオを抜粋します。




犬神家の一族 (1976年)


脚本
長田紀生
日高真也
市川崑


金田一耕助/石坂浩二
那須ホテルの女中はる/坂口良子





シーン92 那須ホテル、金田一の部屋。



金田一、食べ終えた食膳をかたわらに、懸命になって系図を書いている。

$今日も映画馬鹿。

金田一、系図を見て考え込む。


※注
この間、金田一は食事の合間で里芋の煮っ転がしを頬張るショットが数回挿入されます。



襖が開いて、はるが顔を出す。

photo:03



はる「すみましたか」

金田一「うん。とてもおいしかったなあ」

はる「(ニヤリとして)全部わたしがこしらえたのよ。なにが一番おいしかった?」

金田一「生玉子」

はる「まあ、ひどいッ」

と、ガタガタとお膳をかたづけ始める。






シーン105 街。

はるが、スタスタと歩いてくる。

金田一が、横町からひょいと姿を見せる。

「(呼ぶ)おはるさん、おはるさん」

はる「(振りかえって)あらっ」

金田一「待っていたんだよ」



photo:04





シーン106 そば屋。

はるが、うどんを食べている。傍らに金田一。

金田一「ご苦労さま。お腹空いたろ、どんどん食べなさい。急にこんな用事を頼んだりしてすまなかったね。いやしかし、大学に先生がいてくれてよかった。すぐに会えた?」

はる「(食べながら)ええ」

金田一「(手にしたメモに視線を走らせながら)このメモによると・・毒物の成分はアルカロイド系化合物に無水酢酸を作用させたものである・・うむ。やっぱりタバコの中に毒物が混入されていたわけだ」



シーン107<イメージ>フラッシュ・イン

那須ホテル、金田一の部屋。
金田一が灰皿の煙草の吸い殻を、箸で少しつまんで、手にもった紙の上に慎重に置く。



シーン108 元のそば屋。

金田一「(メモを見ながら)それから・・・奇妙な白色結晶が調合され・・・奇妙?(はるに)それについて具体的なことを先生はおっしゃってなかった?」

はる「(食べるのをやめ)生薬から採った成分らしいので、すぐには分析できないそうです」

金田一「あ、そう。さ、食べなさい、食べなさい」

はる、食べる。

金田一「芥子の実と関係ある毒物だと言ってなかったかね」

はる「(食べるのをやめ)芥子の実の毒性の主成分はモルヒネで、塩酸モルヒネが検出されたといってました」

金田一「あ、そう。食べなさい、食べなさい(と、再び熱心にメモを読み返す。ふと、顔をあげる)」

はる、丼を前において金田一を見ている。

金田一「どうしたの?食べないの?」

はる「だって食べてる暇がないんですもの」

金田一「あ、そう・・・(奥に向かって)お勘定して下さい。しかし、助かったなあ、
ホテルの馴染客に薬学部の教授がいて・・・その人よく来るの?(呟きながら財布を出す)」

はる「わたしが払います」

金田一「いいよ」

はる「自分で食べたものは自分で払う主義です」

金田一「いいんだって。探偵の経費で落とせるんだから・・・」







ご冥福をお祈りします。







倉本聰脚本 ドラマ「前略おふくろ様」より