東京家族 | 今日も映画馬鹿。

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映画あれこれ。ときどき音楽。たまに戯言。おまけに麺。






山田洋次監督50周年記念作品



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東京家族



 を観て来ました。






ネタバレ云々の作品ではありませんが、

映画の構成についての記述がありますので

真っさらで鑑賞したい方は、ご注意願います。





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監督・脚本
山田洋次

脚本
平松恵美子

音楽
久石譲







キャスト:

橋爪功
吉行和子
西村雅彦
夏川結衣
中嶋朋子
林家正蔵
妻夫木聡
蒼井優









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小津安二郎監督の東京物語をモチーフに





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山田洋次監督の永遠のテーマである家族を描く優しさの中にも厳しさを秘めた作品です。





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自分が柴又生まれと云う所以もあり、物心ついた頃には

母親に連れられて映画館で「ゴジラ」より先に「寅さん」を観ていたので

おそらく人生でいちばん多く映画館で観ているのは、山田洋次監督作品ということになるのでしょう。

なのでその作品群は言わば映画館で出会えるひとつの故郷だと云えます。





今回も「寅さん」は出て来なくても

その息づかいは作品の中に生きています。

老夫婦と次男がはとバスの東京観光で訪れるひとつの場所が柴又なのです。



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※「寅さん」で数多くの俳優が歩いた江戸川の土手です。



今回の映画で三人が昼食のうな重を食べる場所が帝釈天参道の「川千家」です。



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ここは、「男はつらいよ」でさくら博士が披露宴を行った場所です。





その他にも登場人物たちが近所を歩く時に知り合いと交わすさりげない会話や

ある場面である人物が自転車で道の側溝にはまって転ぶ件なども「寅さん」からの引用です。





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瀬戸内海の小さな島に住む平山周吉橋爪功)ととみこ吉行和子)夫妻が

東京へ出て暮らす3人の子供たちに会いに上京するエピソードを中心に

家族の絆やこの家族に関わる人びとの生活を

東日本大震災後の日本人の生き方の変化も踏まえて

今までの山田洋次作品以上に淡々と且つ丹念に映画は進行します。





東京で開業医をしている長男の幸一西村雅彦)とその妻文子夏川結衣)に

美容院を営む長女の滋子中嶋朋子)と夫の庫造林屋正蔵

このふた組の夫婦を当たり障りのない生き方の模範の様に

今の日本の家族の象徴であるかの如く徹底的に事務的なタテマエの人達として描きます。



一方で安定しない生活ながらも舞台美術の仕事に携わる次男の昌次妻夫木聡)は、

一見頼りないけれど人間的に温もりを感じる人物として描き

さらにその恋人の紀子蒼井優)に老夫婦に対して

長男、長女夫婦とは真逆の人間味ある対応を担い些細ながら心が暖かくなります。






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そこに隠れているのは、山田洋次監督からの今の日本の若者へのエールに他なりません。

後半に描かれる瀬戸内の人々と都会の人々との対比しかり

日本人が忘れてしまった人との繋がりと温もりを映像に焼き付ける行為からは、

監督自ら今やっておかなければならない事だと云う執念すら感じました。

山田洋次監督も既に81歳。

失礼ながら、もう後何本映画が撮れるか分からないと云う思いが激しく伝わって来ました。





しかし、この映画の客層は見事に50代以降が中心でした。

本当に観てもらいたい対象は、もっと若年層のはずなのに…