サスペンス作家
高村 薫さんのデビュー作を
井筒和幸監督が映画化した
黄金を抱いて翔べ
を観て来ました。
監督・脚本
井筒和幸
脚本
吉田康弘
原作
高村薫
キャスト
妻夫木聡
浅野忠信
桐谷健太
溝端淳平
チャンミン(東方神起)
中村ゆり
青木崇高
田口トモロヲ
でんでん
鶴見辰吾
西田敏行
これは、紛れもなく
井筒和幸監督流
脱デジタル映画
その匂い立つような
昭和の香りにクラクラします。
冒頭、某国の爆破プロでスパイのモモ(チャンミン)が
真夏のウダルような暑さの大阪の街の喫茶店である人物と対峙するシーン。
そうそこはカフェでなく昭和風情全開の喫茶店。
そのふたりのシャツ全体に滲む汗。そしてクソ暑いのにホットコーヒーを啜るのです。
そこには、キャラメルマキアートなんて全然似合わずあり得ない世界観が存在しています。
そのディテールだけでこの映画の位置付けが理解できます。
アナログ精神を貫くぞという井筒監督の意志がきっちり示される導入部です。
そして銀行地下金庫の金塊強奪を遂行する男達の
実に人間クサい犯罪劇が始まるわけですが、
さすがに携帯電話は使われますが、その他は概ね人力戦術。
自ら危険なカーチェイスを展開してダイナマイトを強奪したり
最後の砦を崩すのに至っては、ハイテク機器や金庫破りのプロなどは登場せず
プラスチック爆弾でガンガン破壊していく潔さなのです。
あまり頭を使ってない様ですが
それが正しくアナログ精神という事なのでしょう。
そこに絡む登場人物達のエピソードも実に男クサくて躍動的。
そして映画を観ているんだと強く感じさせるその厚みは
さすが云うだけののことはある井筒和幸監督の優れた力技なのだと思います。
硬派なキャラがなかなかハマっていて「悪人」の時よりこっちの方が断然良い妻夫木聡さん。
浅野忠信さんは
いつもの上滑りの流しの感じが持ち味として合っています。
東方神起のチャンミンさんは
日本語の台詞はカタコトとしても危険で繊細な感じが生かされています。
桐谷健太さんは
まだ堅さかありますが、大阪出身の利点である関西弁が当然スムーズなので役に溶け込んでいます。
溝端淳平さんは、
珍しく影のある役どころでイケメン気質を封印してシリアス路線もイケることを証明しています。
西田敏行さん
曰くありげな役どころをベテランの佇まいでソツなくこなします。
紙幣でさえ流通せずにネット上で決済してしまう時代に
簡単に持ち運びも出来ない金塊の強奪を決行するという設定も踏まえて
全体的に粗い感じもしますが、
それも井筒監督の持ち味だと解釈すると
現代社会への反骨精神を剥き出しにした
見所満載の社会派エンターテイメントになったと思います。
映画観た~という余韻がしっかり残る作品でした。
予告編
エンディングソング 安室奈美恵「Damage」
初日舞台挨拶