かつてない816ページの厚さを強調するために、背表紙のタイトルを斜めに入れた。

本棚に置けば、一発で見つけられる

 東宝砧撮影所の正門の左側には、「七人の侍」の巨大な壁画が描かれている。右側には、「ゴジラ」のモニュメントが置かれている。つまり、東宝を代表するシンボルは、何と言っても、世界に冠たるこの2本の傑作なのだ。


加えてこの2本、いくつかの共通点がある。公開年度が1954年であったこと、そして、その音楽を作曲した作曲家が、共に北海道出身で、1914年生まれの盟友同志だったことだ。「七人の侍」を作曲したのが早坂文雄、「ゴジラ」を作曲したのが伊福部昭。すなわち、戦後日本の純音楽界、映画音楽界を引っ張っていくこの2人の偉大な作曲家は、今年が生誕100周年に当たるわけだ。


そのために、彼らの生涯を描くドキュメンタリーが、何本も製作されている。特に伊福部昭は、今年の夏、ハリウッド製「GODZILLA ゴジラ」が公開されたこともあって、すでに数本がNHKBSで放映された。一方の早坂文雄のドキュメンタリーは、「天才作曲家・早坂文雄~幻のテープが語る『七人の侍』」のタイトルで、明日11月8日午後1時から、WOWOWプレミアムで放映される。ナレーターは宮沢りえ。


実は、この作品の原作本となったのが、拙著「黒澤明と早坂文雄~風のように侍は」なのである。この本は、早坂没後50周年にあたる2005年に出版したもの。卒論から出発し、再取材し、まとめたもので、私のライフ・ワークと言っても過言ではない。総ページ数816ページ、原稿用紙1500枚、執筆期間6年間を要した。


ある読者からは、「読んでも読んでも終わらない」と言われた。ついには、「あとがき」を書くページさえなくなったほどだ。何しろ3冊分はあると思われる厚さを強調するために、背表紙のタイトルを斜めに入れるという遊びも行っている。よくこんなお化けのような本を、出版社(筑摩書房)は出してくれたものだと、我ながら感心する。編集者の苦労は、並大抵のものではなかったはずだ。


ただし、評判は良かった。松岡正剛氏は「黒澤と早坂の紐帯に入りこんだものは、本書一冊だけ」と述べて、「千夜千冊」の1冊に選んでくれた。品田雄吉氏は、「よくも調べ、よくも歩いた、真情の溢れる労作」と評してくれた。早坂、伊福部の北海道の青春時代をピックアップして、映画化したいという話も、私のもとには届いている。



WOWOWは、同じ番組を計5回放映する。年内の放映日は以下のとおり。この放送を機会に、天才監督と天才作曲家の熱い関係に、ぜひご注目いただきたい。


※「天才作曲家・早坂文雄」WOWOWプレミアム(50分番組)、

 11月10日(月)深夜0時から。

 12月21日(日)朝6時30分から。