今月も、開催日は、いつもの第3木曜日ではなく、第4木曜日の24日になります。

内容は、ヴェルディの傑作、『仮面舞踏会』です。

会場は、東横線「元住吉」下車、川崎市国際交流センター、大ホールです。

開場は13時05分、開演13時25分、終了予定17時。

鑑賞は、年12回6000円の会員になっていただくか、

1回鑑賞券1200円、のいずれか。

どちらも、当日、会場にて受け付けますので、

開場時間までに、おいでください。

 

以下は、当日も上演前に解説をしてくださる音楽評論家、竹内貴久雄さんの

演目紹介文です。

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§ 「グランド・オペラ様式」の習得に至るまでの、ヴェルディ〈中期〉の変遷


 1847年にヴェルディは、初めてパリ・オペラ座から新作の依頼を受けました。この時にはとりあえず、旧作『十字軍のロンバルディア人』を改訂した『イェルサレム』を提供することしかできませんでしたが、ヴェルディはこの初演後もパリに留まり、当時のフランスで完成の域に達していた〈グランド・オペラ様式〉を自分の作曲にも採り入れたいという思いを高めていったようです。
 この滞在中にパリでは〈二月革命〉が勃発し、ヴァルディは、改革の嵐がヨーロッパ全土へと広がってゆく予感を感じて帰国します。予感は現実となり、実際にミラノでも暴動が起こります。ヴェルディは、愛国的オペラ『レニャーノの戦い』を書き上げ、愛国者としてのヴェルディの作曲意欲は、ますます高まってゆきました。
 こうして、ヴェルディのオペラは、『リゴレット』から始まる充実の〈中期〉へと入っていきます。『トロヴァトーレ』『椿姫(ラ・トラヴィアータ)』と傑作が続き、いよいよ、グランド・オペラへの挑戦という野心を秘めてパリに乗り込み、オペラ座所属の台本作家ウジェーヌ・スクリーブによる『シチリアの夕べの祈り(シチリアの晩祷)』を書きましたが、まだ、本格的なグランド・オペラのスタイルがこなれた作品ではありませんでした。


§ヴェルディにとっての最初の「グランド・オペラ様式」が『仮面舞踏会』


 『仮面舞踏会』には、グランド・オペラの様式をしっかりと学んだヴェルディの成果が、はっきりと見えています。音楽的にはグランド・オペラの大家マイアベーアに倣って第二ソプラノ歌手をしっかり活躍させたり、ソプラノとテノールとの大規模な二重唱を用意するなど、変化に富んだスケールの大きさを聴かせてくれます。単独の独立したバレエ場面こそないものの、息を飲むような大規模な場面転換で拍手喝采を浴びる舞台づくりなど、場面構成でも舞台映えのする仕上がりとなっています。こうして、ヴェルディ円熟の『ドン・カルロ』や『オテロ』へと向かっていく道筋の、最初の作品が『仮面舞踏会』です。
 『仮面舞踏会』は、1792年に実際に起きたスウェーデン国王グスタフ3世暗殺事件をモデルにした創作劇が原作となっています。史実は国王が仮面舞踏会の最中に背後から拳銃で撃たれたというだけのものでしたが、そうした政治的事件をヴェルディ好みの男女の不倫を交えて戯曲としたものでした。〈仮面舞踏会〉がイタリアのヴェネツィア発祥の貴族たちの遊びであり、身分を隠した男女が疑似恋愛を楽しむというものだったことも、ヴェルディの創作意欲を掻き立てたかも知れません。華やかな宮廷を舞台にした、男女の愛憎劇が、円熟期に差し掛かったヴェルディの名旋律に乗せて繰り広げられる傑作です。