次回は、1月16日(木曜日)1時25分 開演
ロッシーニ作曲 『チェネレントラ (シンデレラ) 』です。
以下、当日の解説も担当する音楽評論家・竹内貴久雄さんによる「演目紹介」です。
会場は、東急・東横線「元住吉」駅から徒歩12分の「川崎市国際交流センター」大ホールです。
毎月1回、年12回の鑑賞ができる年会費6000円の会員を随時募集しています。1回のみの鑑賞は、1200円です。どちらも、当日、会場入口で受け付けます。
お気軽に、ご来場ください。
§ 『チェネレントラ』 は 『シンデレラ』 のこと。明治時代には 『おしん』 だった!
フランスの作曲家マスネの有名なオペラのひとつに『サンドリヨン』という作品がありますが、これは、ロッシーニの『チェネレントラ』と同じ物語です。――というのは、もともと原作が、日本では『シンデレラ』として知られているシャルル・ペローの童話『サンドリヨン』だからです。なぜ、こんなややこしい話になるのかは、じつは単純な理由です。
元の物語は、シャルル・ペローの『サンドリヨン』ですが、その意味は「灰かぶり」。暖炉の燃えカスの灰をかぶるような、掃除などの下働きでこき使われている娘が主人公だからですが、その「灰かぶり」を英語にすると「シンデレラ」、イタリア語にすると「チェネレントラ」なのです。
この物語が日本に初めて紹介された時は、これを基にしたドイツの『グリム童話』の一挿話でしたので、これはドイツ語「アシェンプテル」でしたが、明治時代だったので日本風に改められて、なんと「お辛[しん]」だったそうです。ガラスの靴ではなく、扇子[せんす]を落として帰ったという設定に替えられたと伝えられています。これが大正時代の菊池寛などによって、グリム童話に忠実に『灰かぶり姫の物語』になったそうです。ひょっとすると、私たち日本人が『シンデレラ』として親しんだのは、第二次大戦後に日本で大ヒットした「ディズニー映画」からかも知れません。
このロッシーニの「シンデレラ物語」には、ガラスの靴は登場しません。初演当時、イタリアでは、舞台上で靴を脱いだり履いたりするのは下品なこととされていたので、主演の歌手が嫌がったから、とも伝えられています。では、「ガラスの靴」の代わりに何が登場するのかは、当日のお楽しみに!
§ 『チェネレントラ』 は、『セヴィリアの理髪師』 と並ぶ傑作
ロッシーニのオペラでは『セヴィリアの理髪師』が一番有名です。この大ヒットによって、ロッシーニは低迷していたイタリア・オペラの救世主として一躍人気作曲家となりました。注文が殺到して次々に新作を書き続けていた絶頂期の作品の一つが、この『チェネレントラ』です。これも大ヒットし、中に登場するアリアを口ずさむ人も多かったので、〈ピアノの詩人〉ショパンが『ロッシーニの主題による変奏曲』を書いたといわれているほどです。
〈天才〉は、忙しくて時間がないときほど集中できて、いい仕事をする、というのは、モーツァルトが証明していますが、ロッシーニも、この2時間半にわたる傑作オペラを、3週間ほどで書き上げてしまったそうです。ノリの良い軽快な音楽の運びで、一気に聴き終えてしまう楽しい喜劇――。そのハッピーエンドを、年のはじめに、ぜひ!