2024年9月の「例会」は、19日、木曜日、1時05分開場、1時25分 開演です。

めずらしいサリエリ作曲の 『ファルスタッフ』を鑑賞します。

場所はいつもと同じ、東急東横線・目黒線「元住吉」下車、「川崎市 国際交流センター」の大ホールです。

1回鑑賞券は1200円、当日会場で受け付けます。

年間12回鑑賞できる「年会費:6000円」も、当日受付、鑑賞できます。

 

以下は、当日の解説を担当する当会代表の音楽評論家、竹内貴久雄さんによる8月例会で配布された「内容紹介」です。

 

§サリエリとモーツァルトをめぐる〈ウワサ話〉には長い歴史がある
 サリエリという作曲家は、西欧の音楽史の中で、20世紀の半ば過ぎまで、ほとんど忘れられていた人でした。その名前が急に取り沙汰されるようになったのは、イギリスの劇作家ピーター・シェーファー(1926‐2016)が1979年に戯曲『アマデウス』の主人公として登場させてからといわれています。1984年には映画化され、日本でも多くの人が見ています。
 シェーファーの描いた物語は、サリエリがモーツァルトの豊かな才能に嫉妬して、その活動を様々に妨害し、やがて死に追いやってしまうというもので、サリエリ自身は、その自責の念から精神を病んでしまったという設定でした。そのため、サリエリという作曲家は、モーツァルトの敵役としてすっかりイメージが定着してしまいました。
 ですが、じつは、この物語は、昔から広く伝わっていた話をもとにシェーファーが劇に仕立て直したもので、まったく根も葉もないというものではないのです。ロッシーニが自作の上演を観にウィーンに行った折に、直接本人に「あなたがモーツァルトを殺したんですか?」と言って激怒させたという話も残っているほど、当時から有名なウワサ話なのです。
 その背景には、当時のウィーンの音楽界での主導権争いがあって、反サリエリ派がロッシーニを持ち上げて焚きつけたからともいわれています。もともと、反サリエリ派が流したのが「サリエリによるモーツァルト毒殺疑惑」だったともいわれているくらいですから、この〈ウワサ話〉は、相当に長い歴史があるものと言えるでしょう。


§サリエリの作曲家としての〈才能〉は?
 最近は、そんなサリエリの名誉を回復させようという動きも活発になっています。
 サリエリは、当時のウィーンで「宮廷楽長」という大きな権力を持っていましたが、その力を背景に、教育者として、若い才能のある音楽家への協力を惜しまず、無名時代のベートーヴェン、シューベルト、リスト、マイアベーアなどを援助したともいわれています。
 では、サリエリは、ほんとうにモーツァルトの才能に嫉妬していたのでしょうか?
 モーツァルトは間違いなく「オペラの革命児」ですが、サリエリはそうしたモーツァルトのオペラの〈新しさ〉に、先んじて気づいていた一人でもあったと思われます。その証拠に、当時、大衆的な芝居小屋として軽んじられていた町はずれのシカネーダー一座の会場で上演されていたモーツァルトの『魔笛』を、身分違いを承知でサリエリが複数回、観劇に訪れ、高く評価しているのです。そして、その後サリエリは、数年前から筆を折っていたオペラの作曲を再開します。――こうして書き上げたひとつが『ファルスタッフ』です。そこに込められたサリエリの想いは、どのようなものだったのでしょうか? 来月をお楽しみに。