「映像オペラを楽しむ会」は、「身近にオペラがある暮らし」をキャッチフレーズに、毎月1回、選りすぐりのライヴ映像で名作オペラを大スクリーンで鑑賞する愛好会です。

次回の例会は、7月18日、午後1時05分 開場、1時25分開演。演目は、ヴェルディ作曲 『イル・トロヴァトーレ』です。

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以下が、前回の例会で配布された「次回のお楽しみ」に掲載された説明文です。

 

§ ヴェルディの中期を代表する「旋律美」にあふれた傑作
 ヴェルディが残したオペラは、主要なものだけでも20曲はありますが、その中にあって『イル・トロヴァトーレ』は、とりわけ旋律の美しさがいたるところにあふれている名作として人気の高い作品です。ローマでの初演の日には、作曲者ヴェルディがカーテンコールで15回も呼び出されたというほどの聴衆の熱気が伝えられていて、それ以来、聴衆の強い支持が失われることなく今日に至っている人気作です。


 このオペラが書かれた時期は、ヴェルディの作曲の筆に弾みが付いていて、一つ前には『リゴレット』が、一つ後には『椿姫』が書かれています。1851年から1853までの、わずか3年間のことです。正に〈ノッていた〉ヴェルディ中期の傑作群の中核となる作品です。


 この時期には、ヴェルディも音楽ドラマとしてのオペラ台本のつくりに注文を付けるようになっていて、ヴェルディなりの方法が確立していたようで、『リゴレット』『椿姫』とともに、この『イル・トロヴァトーレ』も、幕が上がってすぐの〈掴み〉のメロディで聴衆の心を一瞬にして捉える手際のよさが感じられます。不吉な予感に満ちた、恐ろしい因縁のドラマの開始です。


 多くのヴェルディのオペラ同様、この作品も、しばしば、ストーリーの展開が不自然で、無理があるとか、破綻があるとか言われてきました。ですが、初演当時の批評家も認めているように、それを忘れてしまうほど、グイグイと聴衆の心を掴んだまま離さないで聞かせてしまうのが、ヴェルディのオペラの醍醐味なのです。あっという間に全4幕を聴き終えてしまいます。まさに「傑作」! ですから、このオペラを一気に聴かせる「指揮者」の力量も試される〈怖さ〉があります。
 来月は、とっておきの名演でご覧いただこうと、名盤の比較視聴の最中です。

 

§ おそろしい〈因縁話〉の発端は、こんな話
 舞台は「15世紀初めのスペイン」という設定。因縁話の発端とは、以下のようなものです。
 ――先代の王には息子が二人いましたが、その内のひとりがルーナ伯爵で、赤子の時に行方不明となったのが弟のガルシアです。ガルシアの失踪に関連していると疑われたジプシーの老婆は火あぶりの刑に処せられたのですが、その直後、処刑場に幼い子どもの焼け焦げた骨がくすぶっていたのを、その老婆の呪いだと人々は思い、ガルシアは死んだのだと皆が思いましたが、先王は、「ガルシアはどこかで生きている」と言い続けたまま亡くなりました。
 じつは、その死んだと思われていたガルシアが、マンリーコと名を変え、トロヴァトーレ(吟遊詩人)としてジプシーの老婆の娘アズチェーナに育てられて、旅から旅へ、という生活をしていたのです。運命の兄弟が偶然に出会い、さて――。息をもつかせぬ緊迫のドラマの結末は?

 

執筆:竹内貴久雄(音楽評論家)