小高い丘の上に一人の少女。
傍らには大きな木。
少女はずっと遠くを眺めている。
大きな木には目もくれず…。
遠い昔の春のこと。
少女は遠くを眺めてる。
遠くを眺めて待っている。
父が帰ってくるのを…。
少女の父は漁師。
その日もいつものように起き、
いつものように漁に出た。
でもいつもと違っていた。
嵐。
心配する少女を横目に父は漁に出た。
いつものようにガハハ!と笑いながら。
そんな父を待っている。
遠くを眺めて待っている。
ずっと遠くまで見えるように丘の上から。
嵐も静まり、静寂が少女の耳を刺激する。
少女は待っている。
父が漁へ出てから、
太陽が2回、少女の上を過ぎていった。
………。
………。
少女は不安になった。
少女の頬は濡れていた。
傍らの大きな木にもたれ、項垂れた。
項垂れた頭を撫でる大きな手。
少女は顔を上げた。
そこには父の姿があった。
ガハハ!と笑う大きな口があった。
「パパ!!」
少女の頬には喜びのそれが流れていた。
ほい、と手を差し出す父。
手には綺麗な貝殻が2つ。
『誕生日おめでとう!』
不安で忘れていた少女。今日は誕生日。
嬉々として、貝殻を掲げる少女。
それを見て又、ガハハ!と笑う父。
少女の涙のせいか、
大きな木には花が咲いていた。
【木のよこで貝をかかげる女】
珈瓩陵獲茲世修Δ任后
嘘。
見ろよ 大いなる花
町は昨日よりも鮮やか
確かに感じる 明日は来る
さあ今お前と行く
桜の花、舞い上がる道を