〈パパ!〉

 

高校を卒業してから

ろくに話をしなくなった娘が

いきなり話しかけてきて、父は動揺した。

そして、聞きたくなかった言葉が

父の耳に飛び込んできた。

 

〈会ってほしい人がいるの…〉

《!?》

 

父は平静を装った。

…が、その装いも直ぐに脱がされた。

娘の隣に、スーツ姿の男が現れたのだ。

 

《!!??》

 

男の姿を見た途端、部屋に駆け込む父。

 

〈ちょっと、パパ!〉

 

急な出来事にどうしてイイのか

分からなくなった父。

部屋に閉じ籠ってしまった…。

こんな日が来るコトは覚悟していたようだが

突然のコトで動揺を隠せないでいた。

  

〈パパ!急にどうしたのよ?入るわよ!〉

  

しかし、扉には鍵がかかってる。

暫しの静寂。

  

その静寂を裂くかのように

スーッと扉が開いた。

父は覚悟を決めたようだ。

 

〈パパ!〉

 

安堵の表情の娘。

その傍らには先程のスーツ姿の男が…。

何処となく自分に似ているのが

嬉しいような、腹立たしいような複雑な父。

  

《一発だけ殴らせてほしい》

  

父は自分で驚いた。

下らない常套句が口から飛び出したコトに。

 

〈パパ、何言って…キャァ!〉

  

娘が言葉を終える前に、父の拳は

スーツ姿の男の頬をとらえていた。

男は倒れこんだ。

  

〈何てコトするのよ!〉

 

叱咤する娘。

すると殴られた男は立ち上がり反撃。

紐の様なモノで父の首を絞めはじめた!

  

《き、貴様!何をする!?》  

  

悶える父。

  

“僕は【洋服の青川】の者です!

  娘さんからの贈り物を届けに参りました!”

 

《??》

  

状況が把握できないでいる父。

 

〈パパ、いつも有り難う!〉

《え!?》

    

父の首にはしっかりと巻かれていた。

可愛いチェックのネクタイが…。

  

“では失礼します

  いい娘さんをお持ちですね。

  あとパンチもね…”

  

微笑んで去って行く、スーツ姿の男。

娘に笑われる父。

  

6月の第3日曜日、黄昏時のコト。

  

  

昼間のパパは いい汗かいてる

昼間のパパは 男だぜ

カッコイー

  

 

あ、母の日忘れてた…。