僕の名前は勝(マサル)。
でも気に入っていない。
僕は勝った事がない…。
スポーツ、勉強、ケンカ、
何をしても勝った事はない。
名前負け…。
だから名前を気に入っていない。
こんな名前を付けた親を嫌った時期もあった。
でもこの名前で15年の時が経った。
途中から勝負する事すら避けてきた。
弱い僕…。
今日も淡々と時間は過ぎていく。
いつもの時間。いつもの帰り道。
でも少し違った。
川で子犬が溺れている。
川で子犬が流されている。
見て見ぬふりの弱い僕。
川で子犬が鳴いている。
川で子犬がもがいてる。
気が付けば僕は川に飛び込んでいた。
無我夢中で子犬の方へ。
……。
しかし、僕の意識が遠のいていく。
僕は泳げない…。
飛び込んでから気が付いた。
……。
……。
僕は舐められる感触で目が覚めた。
僕の顔を子犬が舐めていた。
さっきの溺れていた子犬だ。
ペロペロ ペロペロ。
嬉しそうに舐めていた。
僕が溺れているのに気が付いた人が
子犬にも気付き、一緒に助けてくれたらしい。
嗚呼、情けない…。
でも何だか嬉しい。
無我夢中で飛び込んだ僕。
弱い自分に勝った気がした。
少し自分の名前を誇らしく思えた。
初めての勝利。
初めまして 勝利
こんにちは 勝利
ハロー ウィン
ハロウィン
今日はカボチャでも買って帰ろう。
心配ないからね 君の勇気が
誰かにとどく 明日はきっとある