舞う、帽子。

  

突然の強風で彼と帽子が訣別。

追う彼。

逃げる帽子。

手を伸ばし追いかける彼。

「此処までおいでぇ」と、おどける帽子。

中々追いつけない。

その距離数メートル。

  

ここまで本当↑

  

ここから嘘↓

  

中々追いつけない彼。

気付けば見知らぬ空き地に。

それでもおどけて逃げる帽子。

  

「!?」

  

…が、突然帽子が消えた。

辺りを見回す彼。

しかし、帽子の姿は何処にも見当たらない。

項垂れる彼。

  

「!?」

  

項垂れた彼は視線の先に穴を見付けた。

覗き込む彼。

意外と深い…。

ロープで、恐る恐る穴に侵入していく彼。

何処までも穴は続く。

  

数分後、穴は終わる。

そこには広大な草原が広がっていた。

見渡す限りの草原。

  

「!?」

  

帽子が有った。

帽子の傍には季節外れのタンポポが1つ。

寒いのかブルブル震えて、倒れている。

寒さを堪え頑張って生きている。

彼は帽子に土を入れ、タンポポを植えた。

少しは暖かくなったのか、震えが止まった。

「よし!」  

彼は帽子を置いたまま、穴から出た。

   

それから数ヵ月後。

トントン!トントン!

彼は、部屋の窓を叩く音に目が覚める。

下から手が届く距離に窓は無い…。

恐る恐るカーテンを開ける彼。

  

「!?」

  

そこには穴に置いてきた帽子の姿が。

沢山のタンポポの綿毛に運ばれながら…。

  

綿帽子。