過日、彼は打ち合わせが早く終わった為、時間を持て余していた。

そして【象の背中】を観に行く旨をスタッフに告げ、会議室を去る。

『え?動物園に行くんですか?』と言う愚問を背に、会議室を去る。

 

映画館に入ると殆どが年配のお客さん、という事実に驚く彼。

が、映画が始まるとそんなコトも忘れスクリーンに見入る彼。

中盤からは館内に大勢の嗚咽が漏れる…。

天晴れ、役所広司。

 

が、嗚咽に紛れて一人の小父さんの声が…。

 

『可哀想や…』

『頑張れ…』

『くじけるな…』

『殺生や…』

『代わってあげたい…』

 

等と、小父さんの声が…。

 

終盤、もう彼は小父さんが次に何を言うかの方が気になっていた。

小父さんに耳を傾ける彼。

 

【象の耳】