数日前、彼の携帯電話は頻繁に声をあげていた。

しかし、風邪で咽喉をやられ声が出なかった彼は電話に出なかった。

着信を見ると、甥からだとか。

留守電にもメッセージが無いところを見ると、そんなに重要なコトではないのだろう…。

そう彼は思ったらしい。

しかし頻繁に掛かってくる。アドレスを教えておけば良かった、と彼。

 

数日後、体調も良くなり声も出るようになった彼は、甥に電話を。

しかし、出ない…。無理もない、中学生は授業中だ。

仕事が終わり携帯を見ると甥からの着信。直ぐに掛けなおす彼。

しかし、出ない…。

 

この行き違いが数回続いた後、漸く甥の声に辿り着いた。

 

「もしもし。歩やけど、どうした?」

『うん。彼女出来てん!』

 

予想もしなかった返答に戸惑う彼。

恐らく『この間テレビ観たで』とか『○○のサイン頂戴』だと思っていた彼。

わざわざそれを報告する為に頻繁に電話を。何と可愛いヤツだ。

しかし、突然の思いもよらぬ返答に彼は…

 

「お、おう、良かったやん」と。

 

『年上やで。両思いや。じゃあ。』

 

ピッ…ツーツーツー…

 

彼が受け答えをする前に、既に会話は閉ざされた…。

 

しかし、中学2年で彼女が出来るとは最近の子は凄い。否、これが普通か。

彼が中2の頃は、犬の散歩を装い意中の子の家の近所を徘徊していたのだとか。

偶然会えた日は喜び勇んで帰宅したらしい。何とも小さき男だ。

 

そんな意中の子、今はどうしてるのだろうか…?

一度犬の散歩を装い、難波から岸和田まで歩いてみようかな。

 

 

G戦場ヘヴンズドア 1,2  購入