昔々、或る所に小さな村が在りました。

小さいながらも村人達は幸せに暮らしていました。

そんな或る日、何やら村人達は騒いでいました。

と言うのも、天から真っ赤なモノが落ちてきたらしいのです。

その真っ赤なモノはモゾモゾ動き出しました。

真っ赤なモノはヒトの形をしていました。

が、良く見ると頭に角が2本生えていました。

何と赤鬼だったのです。赤鬼の子供だったのです。

村人達は脅え、一目散に家に逃げ帰りました。

しかし、一人の少女だけ逃げ遅れました。いや、逃げませんでした。

赤鬼の子供が尋ねました。

『何でお前は逃げないんだ?』

「何で逃げなきゃいけないの?」

少女は逆に尋ねた。

『何で、ってボクは鬼だぞ!』

「鬼って何?」

『はあ?そんな事も知らないの!鬼ってのは怖いんだ!』

「怖い?」

『そうだ。怖くて酷いコトするから皆から恐れられてるんだ!』

「ふ~ん。どんな事したの?」

『え~っと…これからするんだよ!』

「じゃ、あたしも手伝う!」

『バカ!何言ってんだ!』

「だって面白そうだもん」

『お前、変なヤツだな。名前何てぇんだ?』

「フク」

『フク?変な名前。名前も性格も…痛っ!』

「え!?」

『あいつら~!』

少女が赤鬼の子供に襲われてると勘違いした村人達が石を投げてきたのだ。

『痛っ!痛い!!』

「大丈夫!?あ、血が出てる!鬼でもちゃんと血が…痛っ!!」

『え!?』

村人達の投げた石が少女の頭にも当たってしまった。

『や、やめろ~!!』

赤鬼の子供は叫んだ。

しかし、石は止む事はなかった。

『フク、家(うち)に帰るんだ!ココに居ちゃ危ない!』

少女は動かない。

赤鬼の子供の傍を離れたくない少女。

 

ドン!!

 

突然村中を黙らせた音。

狩りに出ていた村人が赤鬼の子供を目掛けて発砲したのです。

横たわる赤鬼の子供。

「…!?」

うろたえる少女。

 

鬼はそっと、『フクは家(うち)…』

 

と、囁きながら息を引き取った…。

 

怒りで顔に血が上って紅潮する少女。

石をぶつけられた頭には角の様なこぶが出来ていました、とさ。