過日、彼は仕事を終え電車に揺られていた。

何気に車内を見回し「携帯いじってる人多いなあ~』と彼。

メールを打つ者。

ゲームに興じる者。

モラルに反し電話で喋る者。

間違えてテレビのリモコンをいじる者。

等、眺めれば大多数の人が携帯を手にしている。

 

 

その時、電車内では聞き慣れない音が彼の耳をくすぐる。

 

カチャカチャ…

 

音の方に目をやる彼。

視線の先に、独りの少年がルービックキューブに興じる姿が。

周りが携帯を手にしている中、独り楽しげにルービックキューブをする。

しかも可也の速さ。

見る見るうちに、赤、青、黄が一面に広がる。

 

少年の技に目を白黒させる彼。

あまりの巧さに興奮して頬を紅潮させる彼。

 

更に少年は続ける。

一面を揃えるコトに飽きたのか、今度は一面をチェックにしたりストライプにしたり…。

凄い…凄すぎる…。

 

驚きのあまり彼の顔は蒼白。

頭は真っ白。

「失敗すればイイのに…」と腹黒いコトも思っているに違いない。

まだまだ彼はケツの青い男だ。

 

ん?

よく見ると、彼は人間ルービックキューブと化していた…。

 

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