前々述の通り、昨日も彼は目覚まし学校の音で起こされていた。
が、いつも以上に殷賑を極めている様子。
どうやら運動会当日のようだ。
(※【ハイスクール!奇面組】の腕組リーダー、雲童塊ではありません)
しかし生憎の空模様。
雨の中、入場し開会式が行われていた。
まぁ、これも良い想い出になるかもしれない、と彼は口にする。
玉入れ。徒競走。綱引き。種目は次々に移り行く。
と、其処に懐かしいメロディが彼の耳を包み込む。
“翼をください”である。
何事かと、窓から運動場を眺める彼。
すると唄っている。生徒が唄っている。運動場で唄っている。
??
どういう競技なのだ…?何を競っているのだ…?声の大きさか?
翼が生えたら勝ちか?翼が生えて、その飛距離か?
解らない…。
しかし良いメロディには変わりはない。
今 私の願いごとが叶うならば
翼が欲しい
この背中に鳥のように
白い翼つけて下さい
ん?白い翼?
というコトは鶴か?否、白鳥か?はたまたカモメか?
何れにせよそれ位の翼で、果たしてヒトは飛べるのか??
ニワトリなんて問題外。
あ!そう言えばニワトリは昔飛べたコトを御存知ですか?
遥か昔、一人の少女が山道で翼を傷めたニワトリを見付けたのです。
その当時、勿論ニワトリは空を飛べました。
恐らくそのニワトリは飛行中、猟師にでも撃たれたのでしょう。
少女はニワトリを家に持ち帰り、手当てをしました。
それから何日も何日も看病しました。
しかしニワトリの翼は、疾うの昔に治っていました。
でも少女の優しさが嬉しくて治っていないフリをして飛ばなかったのです。
一方少女は、自分の手当ての仕方が悪くて飛べないのだと、悩んでいました。
或る日の早朝、ドスン!という物音が…。
ニワトリが駆けつけると、少女が倒れていました。
ニワトリの姿を見、弱々しく微笑んだ…。
「お手本見せてあげようと思ったけどやっぱり無理だった…」
少女は飛び方を教えようとお家の屋根から飛び降りたのでした。
そしてニワトリの翼に抱かれて眠りました…。永遠に…。
早朝、狂った様に鳴くニワトリ。
それから毎朝ニワトリは鳴くようになったそうです。
そして、それ以来飛ぶコトを忘れてしまったそうです…。
嘘。