今日、彼はネタ出番の為にうめだ花月へ向かう。
運動も兼ねてか久方ぶりに自転車で行くコトにしたようだ。
軽快にペダルを漕ぐ。鼻唄交じりに…。自転車も唄に合わせ踊る様に進んでいく。
と、そこへ。
《ちょっとすいません…》
誰かが彼の鼻唄の邪魔をする。ふと見ると警察官の制服を着用した男性が二人。
恐らくそれを生業とした方々だろう。
盗難自転車かどうかを調べられる彼。勿論潔白。
その後、うめだ花月でネタを披露し、爆笑の後、劇場を後にする彼。
自転車に跨り、風になる彼。
微風から弱風、そして強風となろうとした時、呼び声が。
《ちょっとすいません…》
無風の彼。
ふと声の元を見ると又あの制服を着用した男達が。勿論先程とは違う男達。
ライトを点していなかったかららしい。
そして盗難自転車かどうかを調べられる彼。無論潔白。
ヒゲを蓄えてから、よく呼び止められるようになったのだとか。
人相が悪くなったのか…。
泥棒然としたヒゲ故にか。
ルパン三世然とした手足の細さ故にか。
いっその事、剣の達人と拳銃の達人でも引き連れてやろうか…。
等、考えながら風と化す彼。
ふと振り向くと、まだその場で話している男達。
《じゃ、行こうか》
〈先輩、待って下さい!〉
《どうした?》
〈やっぱり盗んでましたね?〉
《は?何を言っている?ちゃんと調べたよ!彼の自転車だったよ!》
〈違うんです!盗まれたのは…あなたの心です…〉
《!?》
等と話しているコトだろう…。
自転車に乗って 自転車に乗って
ちょいとそこまで 歩きたいから
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