親心子知らず 子の心親知らず | I Love キューバ!!

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時々キューバについて熱く語りたいと思います。

 

魔女の愛した子魔女の愛した子
1,620円
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『続ガリヴァー旅行記』を図書館で探していた時、たまたま目に飛び込んできた本です。

 

思わず手に取り、パラパラっと中を見て、これも一緒に借りてしまいました。

 

「魔女」って、不思議と惹かれるキーワードです。

 

魔女狩りで、人間の醜悪さがあらわになったあの暗黒時代。

 

臭いまで漂ってきそうなほどリアルにイメージできます。

 

すごくいやなのに、恐いもの見たさなのか、気になってしょうがないです。

 

この物語りは、すべての母親と女たちに向けて書かれたそうで、確かに私も読んでみて

 

痛く魔女に共感できました。

 

母性愛に目覚める魔女のおはなしです。

 

 

 

昔、ある森の奥に、一人の女が住んでいました。彼女は魔女。

 

虫や動物と会話したり薬草を探したり、森を愛して静かに暮らしていました。

 

彼女の存在は間接的に、人間たちにも恵みを与えています。

 

それは土地の者も感じるようで、木の洞に時々お供え物が置いてあります。

 

ある日その中に、毛深くて豚のような鼻にコウモリのような耳の、驚くほど醜い赤ん坊の

 

入ったかごが置いてありました。

 

「悪魔の子を 悪魔の妻へ」

 

ずいぶんと失礼なメモ書きで気を悪くした女は、お腹を空かせて泣いている赤ん坊に

 

「魔女は赤ん坊に食べさせてやったりしないものよ。動物の餌食になりなさい。」

 

と言って、そのまま立ち去ろうとします。

 

けれどもなにかの古い魔法がかかったのか、女は赤ん坊を胸にぐっと抱きしめます。

 

そして家に連れ帰り、大切に育て始めました。

 

乳母はクマのイスル。

 

家庭教師は囚われの身の悪魔バゴーダックス。

 

赤ん坊は魔法に守られ、クマに守られ、擦り傷ひとつ作らずに育ちます。

 

魔女の相棒である猫のファランスは、子育てなんてとんでもないと大反対しました。

 

案の定、母親業と魔女の仕事を両立させるのは大変なことで、どちらも失敗が重なります。

 

人間の生活を知らない魔女に、母親がどういうものかわかるはずもないのです。

 

普通の人間ですら最初から親なわけではありません。

 

親といえども子供に育てられて「親」にしてもらっているのです。

 

親も子も、痛い目に遭いながら学習し、成長するものです。

 

けれど魔女は、この子を守りたい一心で、あらゆる危険を遠ざけます。

 

醜い顔だということも、本当の事を隠し、誤魔化してしまいました。

 

それがかえって少年を深く傷つけてしまうことになります。

 

母親の愛情は空回りしたり、裏目に出たり、子供に手をやくのはどこも一緒です。

 

そうこうしているうちに、森に災いが起こります。

 

パターンが崩れ始め、森に人間が入り込んで来たのです。

 

住処を追われ、魔女は息子ランプのため、ありったけの魔力を使い切ります。

 

すっからかんの、ただの女に戻ってしまっても、かえって清々しいような顔をしていたのは

 

「母親」として迷いがふっ切れ、満足していたからだと思います。

 

 

 

さてここからは、息子ランプに焦点を当てましょう。

 

幼い頃、イスルの背中にまたがって森の中を散歩するのが好きだったランプ。

 

動物たちはクマのイスルを見て慌てて逃げていきます。

 

それを見てランプは「自分は森で一番強い」と勘違いして育ってしまいました。

 

実際には、同い年の子グマと体格が違いすぎて敵うはずもありません。

 

クマの子たちと遊んでいて、怪我する羽目になりました。

 

プライド高く育った子は挫折をあじわい、心が捻じれました。

 

その上、人間の子供に近づくとゴブリンだと思われて捕まり、人間達の見世物にされ、棒で

 

つついたり蹴とばしたり、食事も与えられず殺されそうになりました。

 

瀕死のところをイスルに救われ魔女の手厚い看護を受けますが、心の傷は癒えません。

 

「あいつらに復讐してやりたい!!」

 

囚われの身の悪魔にそそのかされ、憎い人間に仕返しするための取引をしたランプ。

 

こっそり魔法の本を持ち出し、悪魔を解放する呪文を唱えてしまいます。

 

悪魔はランプを捕らえた子供達の住む家を破壊し家族もろとも皆殺しにすると、魔女の

 

家に向かって矢印を残し、遠い国へと逃げ去ってしまいました。

 

やがて大勢の村人達が魔女の家に押しかけ、イスルが残って村人達の前に立ちはだかり、

 

魔女と猫とランプがカボチャの馬車に乗って逃げる時間を稼ぎます。

 

 

 

ここからがいよいよ冒険の始まりです。

 

ランプはひねくれるだけひねくれて、一度は死の世界を味わうことになります。

 

痛みも冷たさも感じない永遠とも思える苦しみを知り、生命の移り変わりを目撃し、劇的に

 

心の成長を遂げ、どれだけ自分が周りの愛情に甘えていたかに気づきます。

 

そしてこの世に再生した時、痛みや寒さといった肉体の感じる感覚に酔いしれるほど満足し

 

素直に感じる心を取り戻していました。

 

ワクワク、ドキドキ、ハラハラさせられてどんどん加速するように読み終えました。

 

 

 

子どもなんて恩知らずなものです。

 

親が心配すればするほど重荷でしかありません。

 

自分一人で大きくなったような顔をして、えらそうな事ばかり言います。

 

一緒に歩くことさえいやがって、他人のふりまでしたがります。

 

話しかければ上から目線。会話を続ける気がない露骨な態度。

 

むかつく気持ちを抑えつつ関わろうとする親をさらに軽蔑・・・。

 

干渉されるのが嫌で嫌でたまらない!!

 

早く自立して自由になりたい!!

 

・・・それが自然です。

 

だけど子供達、恩知らずと思われたって気に病むことはありません。

 

親にしてみたところが、そんな子どもでした。

 

いまだに親孝行もできていません。

 

それでいて我が子を恩知らずだと言っているのです。

 

親からもらった恩を、返し尽くすことなど出来るはずもないのです。

 

思い上がったことは考えず、これからの人生をたくましく生き延びて欲しい。

 

親の望みは、それだけです。

 

恩返しなら、とっくの昔に済んでいます。

 

幼い頃、どれほどの幸福を運んで来てくれた事か。

 

その笑顔を見るだけで、家族がどれほど元気づけられた事か。

 

赤ん坊の不思議なエネルギーをもらって、親は大人にしてもらえるのです。

 

 

 

親なんて勝手なものです。

 

子には子の人格があるのだとわかっていながら、言う事をきかないとなんとしてでも親の思い通りに

 

したくなり、ますます憎まれ嫌われるのです。

 

子どもが小さい頃は仕事だなんだと忙しく、寂しい思いをさせておきながら、その子には親に敬意を

 

示せと言ったって軽蔑されるのがオチです。

 

一緒に居てあげられない穴埋めを、物やお金で誤魔化して、「そのうちに・・・」と思う間もなく反抗期。

 

大きくなっても口を開けば「金をくれ」の一言ばかりで、会話もなにもありゃしません。

 

信頼関係を築きたいなど、親の勝手な妄想でした。

 

だけど、お父さんにお母さん、後悔することありません。

 

私たちもそうやって大きくしてもらい、親に感謝する事も思い知ってきたのですから。

 

いつかは子供たちも人の親に成れば・・・。