令和3年4月1日に「母子保健法の一部を改正する法律(令和元年12月6日公布」が施行されます。この法律は核家族化・育児の孤立化などが要因となり、産前産後の身体・精神的に不安定な時期にも関わらず、家族などの支援を十分に得られずに不安や孤立感を抱き、うつ状態の中で育児を行っている母親が存在している社会背景から、産後ケア事業の全国展開を図ることを目的としています。
産後ケア事業とは、産後ケアを必要とする出産後一年を経過しない母親及びその子ども(幼いきょうだいを抱える経産婦や父親を含む)に対して、心身のケアや育児サポート等(産後ケア)を行い、産後も安心して子育てができる支援体制を確保するものです。
この事業に伴い、「妊娠期から出産後に至る支援を切れ目なく行う」観点から、市町村は母子保健包括支援センターや関係機関との連携や児童福祉法や母子保健法などその他法令に基づく母性及び乳児の保健及び福祉に関する事業と連携を図り、一体的な支援の実施
その他の措置を講ずるよう努めなければならないことが規定されています。
現在のコロナ禍の中で、私が勤務する病院においても、里帰り出産ができず、また、両親が他県のため育児支援に来てもらえず育児疲れや育児不安を抱き精神的に不安定になる母親、出産に伴い小さい兄弟児を預ける先がない、面倒を見てくれる親族がいないことで悩む母親、長期入院中に夫や子どもとの面会ができず不安が強まる妊婦さん等の相談が多くなってきており、そういった面でのコロナ感染拡大の影響は出てきているように思います。また、このコロナ禍で産後うつが二倍になった(筑波大調査、2010.10)との報告もあります。
妊娠中に精神的に不安定な状況が続くと、出産後の体調の回復や精神面にも影響を及ぼし
ます。悪化すると育児困難につながる可能性があります。産後に、育児のお手伝いや声掛けや助言、育児の休息がとれるサービス、母親の精神面支援などが、妊娠中より提供できる体制が整っていれば、どれだけの母親や乳児がその家庭が安心して妊娠期を過ごし、出産、前向きに育児へと向かうことができるのでしょう。
厚生労働省は2017年8月に「産前・産後サポート事業ガイドライン及び産後ケア事業ガイドライン」を公表し、この中で「どの市区町村に住んでいても、母子保健事業や保健・福祉・医療等の関係機関の連携によって効果的な運営がなされ、妊産婦や乳幼児等が安心して健康な生活ができるよう、利用者目線に立った一貫性・整合性のある支援の実現が期待される」と述べられています。しかし、今回の改正において、事業を実施するかは自治体に任せられており、限りある人員や施設でどこまで事業展開できるかなど課題も多くあります。この事業の実施は市町村の「努力義務」と規定されているため、同じ県内においても、市町村でサービスの内容に差があるのが現実です。今後は住んでいる地域を問わず、一定の産後ケアが受けられる仕組みづくりが課題になると思います。
周産期に関わるMSWは少ないかもしれませんね。
しかし、これから子育ての予定の方もいるかもしれません(私はすでに終わっていずれは孫守かも・・)。自分の地域の子育て事情を少し興味もっていただければと思って紹介でした。
しもしも