こんにちは、しもしもです。「Go to キャンペーン」が盛んに報道されていますが、
医療従事者はなかなか新幹線に乗ってどこかに出かけることは難しい状況ですね。
この度、転院のために、医療ケアを必要とする子どもが新幹線に乗車し、無事目的地に到着することができましたので、お話をしたいと思います。
A君 現在 生後〇ヶ月。お母さんは里帰り出産で帰省され出産、A君は当院のNICUに入院してきました。咽頭狭窄があり、合指症や様々な奇形を持って生まれてきました。いっぱい治療をして、気管切開術を受け人工呼吸器を装着となりました。
出産時はコロナ禍での面会制限はまだ始まっておらず、お父さんやおじいちゃんおばあちゃんの面会ができていました。が、数週間後には緊急事態制限により面会制限が始まり、お母さん以外の面会が禁止となってしまいました。
お母さんは元気な子どもが生まれてくると思っていただけに、多くのハンディキャップを持って生まれてきたことをなかなか受け止められず、出産後の精神面はとても不安定でした。その上、お父さんは面会を禁止され、県跨ぎの帰省もできない状況(お母さんがお父さんと会ってしまうと、2週間子どもと面会ができないなど・・)。そういう中でお母さんは毎日一人で面会に来て、少しずつA君のお世話ができるようになっていき笑顔も見られるようになっていきました。
A君の状態が落ち着いてきた8月下旬、お父さんが長期休暇を取って(二週間自宅待機後)久しぶりに面会ができ、ご両親の住む自宅近くの病院への転院が決まりました。
転院先の医療機関の先生方からもご助言を受けながら準備を開始しました。
[ミッション:A君を安全に移動させる!]
①移動手段:飛行機、新幹線、自動車などの方法を検討した結果、新幹線を利用。
②必要な医療器具の確認:人工呼吸器・酸素ボンベ・加湿器・吸入器等々・・。
(持ち込める医療機器や酸素ボンベの本数に制限があります)
③転院する当日のスケジュール作成(ミルク、内服、吸引の時間、出発の時間等々)
④新幹線内で過ごす方法:多目的室を利用、医療機器の配置確認、新幹線内の揺れ対策
(多目的室には寝台にできるソファーがありますが赤ちゃんには不向き。ベビーカーを止めるストッパーはありません。多目的室の使用電源量も限界があります。室内は狭く結構揺れます。)
⑤病院から利用するJR駅、到着先のJR駅から病院までの移動方法:病院救急車利用
⑥乗り換え時のJR駅構内の移動方法:JR職員の案内
⑦JRとの連絡調整:多目的室の予約、持ち込める医療機器の確認、電源の位置、アンペアの確認など
⑧移動中の急変時の対応及び途中の医療機関との連携依頼
⑨他必要物品の確認 等々
院内スタッフで話し合いを重ね、JR職員の方々の協力を得て、転院当日に同乗するDr、Nsとお母さん、MSWで、当日持ち込む荷物、医療器具、子どもの人形をベビーカーに乗せて、新幹線(一区間のみ往復)移動のシミュレーションを行いました。往路時の反省を復路の新幹線内で再トライ、帰ってからの反省会、改善点の見直しなど行いました。
転院当日は快晴転院先の病院までは新幹線で1度の乗り換えがあり6時間半の長旅です。当院では初めての試みでしたので無事転院先に到着できるか心配でしたが、A君の状態もよく、大きなトラブルもなく、無事転院することができました。
今後は転院先医療機関で、自宅退院に向けての準備が始まります。医療ケアを必要とする子どもが自宅で生活していくには、両親が様々な手技を練習し習得すること、両親の精神面のフォロー、地域の多くの支援を必要とします。A君が新たな土地で両親と一緒に暮らし、成長していくことを遠くから応援しています
コロナ禍、面会制限により、出産からの数か月間、いろんな治療を受けながらも成長し頑張ってきたA君の生命力、一人で面会に毎日来ていたお母さんの子どもを思う気持ちと力強さに感服、そしてシミュレーションや移動当日にご協力・ご指導してくださったJRの皆様に感謝いたします。
私たちMSWも、患者さんとその家族の力と、院内スタッフとの連携、地域の支援者の方々に支えられながら支援をしていることを日々感じています。
しもしも