通常の三倍です。ちょいと真面目な内容ですが、皆様にお付き合いいただければ幸いです。

 

 

〜子どもの意思決定を考えてみた〜

 

P.N 通常の三倍

 

意思決定支援が必要な対象者とは、ソーシャルワークにおいては、知的障害、精神障害、認知症状などの判断能力が低下している人々のみならず、事故や災害など、危機的状況に置かれ一時的にパニック状態になっている人、必要な情報にアクセスできず選択のための判断材料が欠乏している人など、一般的に言う判断能力の低下しているもしくは意識障害という属性の人々だけではないと考える。人々は、環境と状況によって判断能力の有無にかかわらず、判断しきれない選択肢に遭遇することがあるからである。

 

認知症や一般的に判断能力が低下している人としてイメージされる人々には、近年ガイドラインなどが発行されてきている。しかし、例えば、教育現場では、未成年であるがゆえに大きな決断を自分自身では行えない場合がある。経済面、生活全般、将来の進路についても判断能力がないとは言えない存在であっても、依存している両親や家族の判断が意思決定を大きく左右する属性の人々であると言える。

 

そのため、様々な意思決定場面では家庭内や学校内の力関係によって、自分自身の希望、意思決定が尊重されない場面が多いのである。しかし、彼ら、彼女らは、意思決定能力を有している。環境によってその権利が保証されていないのである。もちろん、周囲の環境は意思決定権を剥奪する意図は全くないが、慣例や保護的・愛護的な心情によってそれをしてしまっているのである。このような場面においてソーシャルワーカーは、意思決定支援の必要性を体感する。

 

状況としては、未成年であるため、身上監護の義務を有する養育者の存在が、意思決定権を侵害する場合。進路などを選択する場面で、教育部門の教師等が成績という数値から本人の適性を確定してしまい、説得という形で、意思決定権を侵害する場合などは、日常的に発生する権利の剥奪である可能性がある。やはり、ソーシャルワーカーは、監護・養育や教育という観点が行きすぎた場合の、知らず知らずのうちに剥奪された自己決定の権利を保障し、より本人らしい選択を確保する必要性を知っておかなければならない。

 

 

子どもの意思決定支援のプロセスは、学校生活における破綻、および本人からのSOSサインのキャッチから始まる。

 

アセスメント

学校生活において発せられたSOSを、担任、学年主任、学校幹部、親や家族、SCなどとともにキャッチした場合は、初期アセスメントを実施する。学校場面では、児童生徒の自覚がないままに、生活リズムの破綻や身体症状を呈することが多い。そのため、一見課題はなさそうに見えていても、背景に問題があるケースがある。

周辺情報の収集や本人面接を通して、現在露見している状況についての分析を行う。

その結果、本人の意思決定に関する事項が侵害もしくは剥奪されていることが確定した場合は、その確保のためにプランニングを実施する。

 

プランニング

アセスメント時の面接や情報収集にて、なんらかの自己決定の権利が奪われていることが見えた場合、その再獲得に向けた計画を立てて行く。

親の養育に大きな課題があり、抑圧や放棄されている場合は、行政の子育て支援関係課や状況に応じて児童相談所などとの連携を図ることで、安全を確保した上での本人の意思のあり方を引き出す関わりなどを計画する。

進路等において、親や教員側の理論が先行してしまい、自分自身の意向が表明できないなどの場合は、本人の意向を語る場を確保し、自分自身の現在の思いと現実的な立ち位置(成績等)の認識などを確認するなどの作業を通して、改めて周辺の意向との比較を行うなどを進めて行く。当然、ソーシャルワーカーはこの分野については専門家ではないため、思いを引き出すこと、場を設定することなどを担いつつ、進路指導や担任との協力体制を整えることを計画する。

 

援助の実施

援助の実施については、本人との関係性を構築しつつ、立案したプランに柔軟性を加味しながら進めて行く。その際、本人の意思決定が幼さや未熟さにより、正当性を欠いている場合も十分にあり得る。また、養育者である親や家族、教育者である学校の先生との関係性は、本人達にとっては、非常に影響力が大きく大切なものとなる。そのため、権利の侵害や剥奪の様相が見えたとしても、対立軸としての存在ではなく、本人意思決定をサポートする支援者という立ち位置に変容できるような関係性を構築して行くことも、ソーシャルワーカーの役割であると言える。

 

評価

一援助過程が終了した場合、もしくは、援助経過中であっても必要に応じて援助の評価を実施し、プランの変更や終結を検討することは必須である

 

 私たち、医療ソーシャルワーカーの対象は年齢による区切りは無い。そのため、様々な世代の対象者を想定し、対応できなければならない。そこに、改めてソーシャルワークの幅広さと奥深さ、そして興味深さを感じる。