2018年8月 神経内科外来

 歩くのも怪しい状態で、採血と問診を受ける。眼瞼下垂、吃音、首が支えられないという状態で担当医と話すと、次の一手としては免疫グロブリン療法(IVIG)となることを伝えられた。詳しくは知らないが、保険の関係もあり、十日程度の入院になるとのこと。「入院中はリハビリもやりましょう。」と言われた。
 一回の入院で、三か月から半年程効果が持続するらしい。血液製剤なので、C型肝炎のようなリスクが無い訳ではないが、副作用もかなり少ないようだ。
「IVIGは高額な治療だけど、やることになれば難病申請も通るだろう。神奈川県は高額な治療を選択しないと軽症患者という扱いになってしまい、難病申請が通り難い。医療側は軽症を重症にしないように治療しているので、軽症患者を軽視する方針によって自由に治療法を選びにくくなり、憤っている。」
 担当医は言ってくれた。
 十日間の入院が許容出来て、医療費の問題解消出来れば、デメリットはかなり少ないと言えるだろう。

 ちなみに問診後、鞄を落としてしまい拾おうとして、転倒した。最近恒例となった太もも前側の脱力により、少しバランスを崩すと立て直せなくなる状態だ。
 看護師さんが二人ほど来てくれた。
「こう、クラクラっとすることは良くあるの?」
「え?」
「自律神経とか。」
「いえ、重症筋無力症という病気で、脱力によりバランスを崩すとしばらく起き上がれないのです。(確かに採血で気絶したことはあるが。)」
「ん?あぁ、そうなの?……まぁ、血圧とか測っておこうね。腕にこれ巻くよ。」
 説明は試みたものの、MGによる脱力でこうなるということは、感覚として理解出来ないようだった。体温と血圧を測られ、SPO2計という物も初めて使った。(酸素濃度は97%だった。)
 ちょっと休んだ後に、出口まで車椅子を貸すか聞かれたけど、断った。院内だけ車椅子でも、結局そこから歩いて帰らないといけないので、あまり意味がないように思えた。

2018年8月 産業医面談

 外来後、二週間程で産業医との面談があった。
「仕事の状況はどうですか。」
「十月くらいまで関わった案件の残りがあり、出張が多少あります。しかし周囲の協力もあり、九月からの出張回数は大幅に減るはずですし、担当の引継ぎも十月には完了するはずです。現在は残業は二十時間から四十時間に抑えていて、今後もそのペースに抑えるつもりです。」
「そうですか。残業も、もう少し抑えたほうが良いかもしれません。制限を掛けることも出来るので、必要であれば言ってください。体調はどうですか。」
「出張が多く無理をしすぎたからか、お盆明けくらいまでは食事や歩行が困難な状態でした。三回転びました。固形物は調子が良い時間に少し食べられるくらいなので体重の維持も難しく、プロテインサプリメント、ラード、カロリーメイトゼリーや豆乳、牛乳などでカロリー摂取しています。お盆休みに休んだので、少しづつ回復している感じはあります。」
「病院で栄養指導を受られるはずなので、担当医に相談してみると良い。経管栄養用の高カロリー食も保険が適用になるので、コストの問題は解決出来るのではないか。摂取カロリーが不足すると、筋肉を燃焼させてエネルギーを得ようとするので、更に筋力が減り悪循環となる。」

2018年9月 神経内科外来

 だいぶ体調は回復していたので、問診時の症状は眼瞼下垂くらいだったと思う。
 妻と診察室に入ったので、朝夕の用意の話となった。
 朝は起床から朝食や寝ぐせ直し、夜に寝落ちした場合はシャワーと持ち物の確認、服を着替えたり靴を履いたり、そして通勤。夜は通勤からお風呂と夕食と。これが、ぜんぶ続けて出来ることのほうが珍しい。大体、食事かお風呂のあとは症状が強く出てしまうので、どちらかを諦めることになる。
 朝は一時間でも長く寝たいし、起きてすぐプレドニンとメスチノンを飲んでも、家に居る間はあまり効果が現れない。社会人として身だしなみは死守したいので、朝食を諦めることが多い。
 夜は時間に融通が利くし、朝よりは症状が軽いことが多いので、体重維持のための大切な栄養補給タイムとなる。結果、通勤からの食事で疲れ果て、寝落ちが多いので、お風呂は朝に回ることになる。
 こんな話をして、担当医にもなんとなく暮らしぶりが伝わったようだった。
「やっと分かってきましたよ。」
 と言っていたと思う。

 やはりIVIGはお薦めしたいとのこと。私自身も、時期を調整して、一回は挑戦してみようという気になった。入院は、あまり数か月先の予約を取るものではないので、一週間から一か月先くらいの感覚で相談してほしいとのことだった。

 経管栄養用の高カロリー食について聞いてみると、「確かに処方することは可能ですが、重いですよ。」と言われた。更に、「流動食に頼って固形物が食べられない状況で仕事をしていくのは明らかに無理しすぎなので、流動食に頼らずに済むくらいの治療をすべき。」と言われ、納得した。

 実は八月の採血で白血球数が多く出ていて、「怪我をしていなければ、恐らく疲れすぎで一時的に数値が上がっただけだろう。」と説明を受けていた。その時は頭に浮かばなかったのだが、五月の健康診断でも異常値で再検査となっており、七月の再検査で正常値が出ていた。思い返すと、五月と八月の採血時は歩行困難レベルで症状が出ており、疲れていた。たぶん症状(疲れ)と白血球数の値はリンクするのだろう。

 当人の感覚として現在は小康状態に思えるが、長く喋ると吃音は出るし、普通の食事では体重の維持は不可能。階段の上り下りは杖が必要となったし、小走りはほぼ無理、腕立て伏せの姿勢で状態を起こすことが不可能。子供とは遊んでいない、というより遊べない。自動車の運転も、一時間くらいなら普通にしてしまっているが、複視も眼瞼下垂もかなり出ていて、サングラス着用で頻繁に片目を閉じて運転している。
 確かに、重症筋無力症という病気に色々と慣れてしまったけど、あまり良い状態ではないかもしれない。

 あ、メスチノンは最近、一日三錠から四錠で推移しているため、処方も五錠から四錠に減らしてもらいました。