■はじめに
インターネットを通じ、一昔前では考えられなかったMG患者同士の交流が行われています。私自身もそういった場(SNS)で情報を頂き、励まされ、闘病生活を送っています。
最近、仕事や家族のことを真剣に考えなくてはいけなくなり、人付き合いも億劫になってしまい、SNSから遠のいています。この記事はそんな今だからこそ書ける記事だと感じます。
MG治療、医療への疑問を包み隠さずに書くこと、それは、医療を信じて辛い闘病生活を送っている方を傷付ける残酷な行為です。私自身も、書いていて心臓がギュッとなるような箇所があります。MGが治る可能性を示すような情報でもありません。
私はAchR陽性で、他の病気を併発していませんので、本当に苦しい状況の方には無意味な内容が多いとは思います。
それでも、私が知る範囲では見たことのない意見であり、生活の質(=QOL)を向上させるヒントになるのでは?と思い上がったことを考えてしまいます。
誰か一人だけでもQOLを改善してくれたら、という思いで書きますが、あまりにも不快でしたらページを閉じて下さい。
■医者と患者の目的の違い(立場が変わると、適切な治療も変わる
非凡な名医は存在しますが、ここでは平凡な医者を基準とします。
私は医療関係者ではありませんが、機械や設備のアフターサービスに携わってきて、職業としての医者との類似性を感じています。
語弊のある言い方かもしれませんが、両者とも“修理屋”と括ることが出来ると思います。補足しますと、機械の修理屋もミスがあれば人が死にます。
営業事務関係でさえ、ミスがあれば関係者の自殺に繋がることがあります。人命に関わる聖職という意味では、医療関係者だけが特別ではないと考えます。
ここで考えたいのは、「ギリギリで医師免許は取得し医者をやっているが、理想の医療を追求する余裕や能力は無い」という平凡な医者についてです。
犯罪レベルの無能又は悪意のある医者について考え出すとキリが無いですし、有能な仕事人はどこの業界にも居て、彼らは資格とは別の次元で自己研鑽を欠かしません。
平凡な医者に限定すれば、医療の目的は継続した収入を得ることと同義となり、「なるべく殺さない、救急搬送されるような事態を避ける、もしもの時にも責任追及を避ける」といったものになるのは自明かと考えます。
目的達成の手段として、「エビデンスに基づいた医療、患者をコントロール下に置く」といったことが重要となります。
医療はメカニズムによるもの、統計学によるもの、根拠が無いものに分類できる。
最近、エビデンス、EBM(Evidence-Based Medicine)という言葉を耳にする機会が増えましたし、確かに必要かつ重要だと考えます。一方、エビデンスも絶対ではなく、アプローチやデータの読み解き方次第では、適切でない結論が導き出されることもあると考えています。
ここでは、医療を3つに分類してみます。
- メカニズムの解明による医療例
A病という不治の病は、B菌が原因と解明され、特効薬が開発された。(特効薬に問題が無いかは、認可や追跡調査によりエビデンスによって確認される。) - 統計学による医療例
A病という不治の病は、C薬が有効というエビデンスがあるが、症状を緩和するメカニズムは解明されていない。 - 根拠が無い医療例
A病という不治の病は、前世での悪い行いが原因である。
一例として、盲腸(虫垂炎)を挙げさせていただきます。
昔はそれなりの死因となっていた虫垂炎ですが、今では死因とならないと考えるほうが一般的です。
ここに至る道は、手当たり次第に体の一部を切っていってエビデンスを積み重ね、正しい切除部位を見つけたわけではありません。そんなことをしていては、「虫垂を切る」という最適解に辿り着くまでに、多数の犠牲者が出てしまいます。
一方、重症筋無力症(MG)は、メカニズムが解明されていないゆえに難病とされています。EBMといえど、現在の治療法が先ほどの「虫垂を切る」に値する最適解に辿り着いているとは思えないのです。
MG診断前に感じた、医者と患者にとっての“良い治療”の違い
医療に疑問を持つに至った経験としては、湿潤療法の実践が大きかったと思います。
湿潤療法とは、外傷を乾燥させず、カサブタを作らずに治す方法で、私は“ゴッドハンド輝(山本航暉)”という漫画を偶然読んで出会いました。
現場で日夜、機械整備に明け暮れていた頃は、常に身体のどこかに傷がある状態でしたので、従来の乾燥させる療法と湿潤療法を比べる実験環境には事欠きませんでした。
自分の身体で試した結果としては、湿潤療法ではカサブタを作る場合の何倍も早く綺麗に傷が塞がるので、発想が正しいことはすぐに理解できます。しかし、慣れないうちは周辺の皮膚がかぶれたり炎症を起こすことも多く、デメリットも多かったのです。
さて、医学界では1960年代から1980年代には湿潤療法の報告が上がっていたそうですが、実際の普及は2000年を過ぎてからになります。それも、外傷ではなく、褥瘡の治療から広がっていったようです。(上記のゴッドハンド輝が2005年、J&J社のキズパワーパッド発売が2004年のようです。)
戦国武将が温泉で刀傷を癒したエピソードなども、以前は「温泉成分に、そんな治療効果があるか?ただ敵が襲ってこない環境で休養を取りたかっただけだろう。」と考えていました。
湿潤療法を知れば、温泉くらいしか湯に浸かる習慣が無かった当時、傷の治りが早くなるのも納得です。(頻繁に湯に浸かるとカサブタが緩んで自然に剥がれ、皮膚の再生が促される。)
ここで前項の「なるべく殺さない、救急搬送されるような事態を避ける、もしもの時にも責任追及を避ける」という平凡な医者の目的に湿潤療法を照らし合わせると、積極的な活用が遅れた理由も見えてきます。
生死や寿命に大きく関わってしまいそうな褥瘡ならともかく、放っておいても治るような外傷の治療は、“エビデンスのある”従来の処置を行っておけば、責任を追及されるような事態にはならないのです。
患者の方も、放っておけば治るようなものなので、完治が遅れても大きな不利益とは感じず、特に疑問は抱かないわけです。
逆に良かれと思って湿潤療法を採用しても、患者側の十分な理解が無ければ、従来療法では起らないはずだった炎症やかぶれや異臭にびっくりし、不満を持たれてしまうかもしれないのです。
当時の、生傷が絶えない私にとって湿潤療法はとても良いものでしたが、医者にとっても同様とは限らないのです。
このように、医者と患者にとっての“良い治療”は、異なる場合があります。
以上、長々と湿潤療法について書かせていただきましたが、これがMG治療であれば、効果が薄いEBMを漫然と適用されてしまう可能性が見えてくるのではないでしょうか。
MG治療への疑問点を列挙する。
以下に列挙する疑問は、湿潤療法の時と違って、何十回、何百回と自分で試せるものではありません。従って確信には至っていないものばかりですが、私には見逃せない課題です。
筋力トレーニング
MG治療のガイドラインでは、筋力の低下は抗体の異常によってのみ引き起こされるような書き方をされています。また、MG患者が無理をすると、クリーゼなど増悪の引き金になることは事実です。
従って、善良かつ平凡な医者の多くは、筋力トレーニングは百害あって一利なしと判断し、「筋力トレーニングは禁止」と言います。
症状を実感することの出来ない医者だけでなく、患者の方も、筋力低下と筋肉量は無関係と考えている方が少なくないようです。
書籍やインターネット上で色々な方の闘病日記を読ませていただくと、筋肉量が100でも50でも、出せる力は同じ10だと考えている記述が目につきます。
しかし、診断後に何度も筋力を増減させてきた私の経験上、MGによる筋力の低下は、抗体の異常によって筋力トレーニングが充分に行えないことによる筋肉量の低下が大きく関係していると確信しています。
先ほどの例では、筋肉量が50の場合出せる力が10とすれば、筋肉量を100に増やせば出せる力が20位に増えるのです。(完全な比例関係にあると主張しているわけではありません。)
しかも、体幹などの筋肉を増やすと、呼吸や、球症状(咀嚼嚥下や発音)など、一見無関係な部分の症状も改善します。
この一見無関係な部分の改善は、栄養状況の改善によって、筋肉量が増えているようにも考えられますし、生活動作での疲れが減ることの効果も大きいと感じます。
MGが筋力トレーニングで治るとは考えていませんが、MG患者のQOL向上にとって筋力トレーニングが重要なことは間違いが無いと確信しています。
ではなぜ、いつまでもMGは筋力トレーニングが重要というエビデンスが出来ないのでしょうか。
それは、健康な方の間でさえ、「まずは食事」「関節を育てるのが何より大事」「ウォーキング・ランニングは筋力トレーニングではない」などの正しい筋力トレーニングの知識が広まっていないこと。
また、そもそもダイエットやトレーニングを継続できる方が少ないことが関係しているでしょう。
病院食
インターネット上には入院中の病院食をアップしてくれる方が沢山いらっしゃいます。
私自身も一回だけですがMGで入院し、通常食やソフト食のお世話になっています。
大抵、「退院後も、理想的な食事のお手本にしてください……」などと書かれているようですが、一貫して言えるのは、良質なタンパク質が少なすぎます。
あれでは毎食完食したとしても、必要な運動が行えないMG患者は筋肉量を維持できません。
理学療法士によるリハビリの運動メニューは、頻度回数が足りないながらも、良いものでした。しかし、栄養が足りていない状態では筋肉が殆ど増えませんので、効果が上がりにくいのです。
栄養士も理学療法士も居ながらあの状況では、資格を取るために勉強してきた内容が根本的に間違えていると推測されます。
筋力トレーニングの詳細を書き出すと話が散らかってしまうため別の機会としますが、私は入院中に、病院食に加えエンシュアとプロテインサプリメントを飲んで、低下した体重を戻しました。
QMGスコア
QMGスコアは、MGの症状と治療効果を確かめるために、標準的に利用されている方法です。これも、MGの標準治療に対する疑問を増やすものです。
殆どの項目は、「同じ姿勢を何秒維持できるか?」というもので、医者から毎日強要され、疲れ切っているMG患者も多いようです。
このようなテストで投薬治療の効果を判断できるという発想は、” 筋力低下と筋肉量は無関係”という思い込みから発生していると感じます。
このテストの問題点は、健康な方でも疲れてしまうような内容に反して、筋力トレーニング効果が低いことです。
読まれる方の現状を考えると書くのも躊躇われるのですが、QMGスコアを治療の基準にすると、負のサイクルに陥る可能性が高まってしまうと考えられるのです。
MGの症状が悪化し入院や退職に追い込まれると、ベッドでゆっくり休むことにより、殆どの例で一時的にQMGスコアが上がることになると思います。
しかし、そのまま家事や日常動作さえ充分に行わず、QMGスコアや効果の上がらないリハビリだけの生活を続ければ、次第に筋肉量は減り、QMGスコアは悪化していきます。
すると、QMGスコアを回復させるため、より強い投薬治療が行われるのです。
しかしながら、筋力トレーニングの質の低下により失われた筋力は、投薬では戻りません。
胸腺摘出
これに対しては実体験が全く伴わないので確信も何もないのですが、疑問に思っていることを全て書くと決めたので、書きます。
MG治療ガイドラインによると、胸腺で異常な抗体が作られているかもしれないので摘出する流れになったようなのですが、摘出後も別の場所で異常な抗体が作られ続けるそうです。そのため、抗体値が正常範囲まで低下することは少ないようです。
一方、発症後の抗体値の増減は、病状に無関係というのが現在の認識のようです。ここが、矛盾しているように感じます。
また、医療側のMG患者への無理解から邪推すると、発症及び胸腺摘出前と同様に仕事を出来なくなった方が多かったために、結果として無理をしない生活となり、“胸腺を摘出すると軽快する”というエビデンスが出来てしまったのではないか、という疑問があります。
対症療法と原因療法(根治療法)
メスチノンなどのコリンエステラーゼ阻害薬は対症療法、プレドニンなどのステロイドは原因療法(根治療法)という話を色々なところで聞きます。
しかし、以下2点から、現在の治療薬は全て対症療法なのでは?と感じています。
一つ目は、異常な抗体が生産されるメカニズム(原因)が不明な時点で原因療法を発見することに矛盾があること。
二つ目は、原因療法であれば、投薬を止めても効果が持続すると考えてしまいますが、実際には持続しない例が多く、寛解は奇跡的なことです。
AchR陽性、MuSK陽性、DS-MGは違う病気かも
これは完全に感覚的なもので、根拠は全くありません。同じ病名にすることで、社会的な認知が進みますし、仲間が増えたようで心強くもあります。
難病(特定疾患)、自己免疫疾患は多くの病名がありますが、MGは原因と考えられている抗体が患者によって異なり、病態も治療法も異なる可能性があります。であれば、なぜ同じ病名なのだろうか。という疑問があります。
感覚的にも、私と同じような方法でQOLを改善できる可能性がある方は、同じAchR抗体陽性で併発している難病が無い方だけなのかもしれないと感じています。
MGは精神的なもの?
私を含め、多くの患者さんは仕事などが死ぬほど忙しい時に発症しています。心因性MGが存在する可能性があるわけです。
しかし今の時点では、先天的にある種の免疫異常がある人が限界を超えることで発症することが多いのだろうと考えています。つまり、発症前からMGと診断されない程度の異常はあったという考え方です。
個人的には、心因性だからといって、気合で治るとか、軽い、仮病というイメージはないのですが、社会的には精神的なものと言わない方がイメージが良いですね。
心因性と言われたことで、効いているにも関わらず投薬がストップされる例も目にしました。
眼筋型と全身型は無い?
この項目も直感が主ですが、以下から、検査眼筋型は無いのではないか?と疑っています。
- 私自身は全身型ですが、目以外の症状が極めて軽い時があること
- 異常な抗体は全身を回っていること
- 体の一部を酷使しても、全身に影響が出ること
- QMGスコアや筋電図なども判定が非常に難しいこと
- 全身や球症状はかなり進行しないと病気らしくならないが、目だけは日常生活に支障が出る前から病気らしい見た目になること
実態と異なる治療ガイドライン
1.尿漏れ
私は、一時期尿漏れに悩まされましたが、トレーニングで改善しています。この症状は、SNSで申告して下さった方がいたので、MGの症状なのではないかと疑いました。
原因は筋力低下なので、多くの患者に起きていてもおかしくないのですが、恥ずかしい上に、他の症状が大変なため申告する方が少ないのでしょう。
結果、ガイドラインに一言も出てこないため、平凡な医者に聞いても「それはMGとは関係ない」と言われる可能性があります。
実は、医者が「MGと関係ない」と言ったところで、「ガイドラインに書いていない」程度の意味だったりするのですが、医療が万能だと思っている従順な患者は、真剣に悩んでしまいますね。
報告されないものは研究されず、その病気の症状に登録されない。逆に誤った認識で登録されたものは実体と違くても、延々と記載され続ける。医学とは、エビデンスとは、その程度のものなのです。
このように、MG研究の黎明期の患者の発言が、実態と異なるのにガイドラインに残り続け、医者と患者の不幸な関係を生んでいる例はまだまだ多いと考えています。
他にも、ガイドラインと異なるMG症状の例を挙げます。
2.朝がつらい
ガイドラインには“夕方に増悪する”と書かれているので、多くの医療関係者は共感を示す意味で「夕方に疲れるんですよね」と言ってくれます。
しかし、睡眠中に薬が切れて、朝の用意が一番辛い日もあります。
お昼寝すると、夕方の方が調子よかったりもします。
3.目のピントが合わない、目の移動が遅い
私は体調により、ジャンプしたり走ったりできるのですが、視線を移動する筋肉が弱く、動きに付いてきてくれなかったり、激しく振動したりします。
これもガイドラインには“複視”としか書いていないため、「MGの症状ではない」と言われてしまいます。
4.メスチノンで胃痛
患者さんの間では、メスチノンは胃痛の原因になりやすいという共通認識があると思います。
しかし、気を付けるべき副作用の欄には“下痢、腹痛(以下省略)”と書かれているので、平凡な医者は「メスチノンで胃痛は考えにくい、別の原因だ」と言います。
そして、副作用としての報告も上がらず、添付文書の更新もされないわけです。
■おわりに
いきなり終わりですが、ここまで読んでいただいた方、ありがとうございました。
前書きに書いた内容の他に、単純につまらない文章が続き、苦痛だった面もあると思いますが、皆様が少しでも快適に過ごせることを願っております。
※本記事は、noteにも載せています。ご了承願います。